二話 朝のお約束
■――朝の出来事――
「レイ、朝よ。起きなさいな!」
レイと呼ばれた少年の母親、クレン=ウィルズ=シェイカは、大声で言いながら足早に階段を駆け上がっていた。エプロンを着て、母親感プンプンなのだが顔は童顔で、普通に小学生のような顔つきだった。髪の毛は赤く腰の位置まであって瞳はきれいな茶色だった。
「ほら、朝よ。今日から学校じゃないの?」
そう言って、扉を開け放ち、一気に布団に近づいたと思うと、シェイカは思い切り布団を引っぺがした。
「朝よー!」
最高の笑顔を向けて。
ドゴンッ!!
「?」
しかし、布団の中には誰もいなかった。シェイカは首をかしげながら「あれー?」と言っている。
「母さん…」
シェイカの、後ろから声がした。そこには、シェイカの息子。クレン=ウェイダ=レイが作業服を着てあきれた顔をして立っていた。レイも髪は長くて赤い。瞳はシェイカと同じ茶色。身長はシェイカより少し高いくらいだった。
「あら、工房にいたんね?レイ」
「そんなふうに、首を傾げなくていいんよ。それより…」
レイは、ゆっくりとすぐ隣の壁に突き刺さっている枕を見つめ、
「いつものことだけど…。俺のこと、殺す気なん?」
「あー…」
シェイカも、それを見て固まった後、すごくシェイカ睨んでいるレイに向き直り、少しはにかんだ。
「ごめんね?」
「ごめんね?じゃない!何度、注意したら分かるんよ!」
「ゴメーン」
そう言って、シェイカはさっさと部屋から逃げ出して下に下りていった。
「全く…」
そう、これは今日だけのことじゃない。つい、レイがシェイカに起きた事を伝え忘れるといつも壁に穴が空くことになる。今、枕が突き刺さっている壁はぼろぼろになってしまっていて、何箇所も修理したあとがある。
(また、直さんとなぁ…)
そんなことを考えながら、机に置いてあるカレンダーを見つめてつぶやいた。
「そういや、今日。入学式やったんなぁ…」
そして、煤と油で汚れた手を見て、風呂に入るため部屋の扉を開けた。部屋を出るついでに、片手で壁に突き刺さった枕を引き抜いてその辺に投げ、部屋を出た。
「レイ、早くご飯食べなさいな!」
さっきの事を全く悪びれることのない声。レイは適当に返事をしながら階段を下りる。
(まず、風呂だな…)
まだ眠っている頭でゆっくりと階段を降りきった。
今日から、新しい生活が始まるのだ。
炎道の第二話です 楽しんでいただけたでしょうか?
この後も、レイははちゃめちゃに・・・
レイ(以下・レイ)「そうなっていくんよ?」
炎道(以下・炎)「おわっ!いきなりだな・・・」
レ「まあ、挨拶にきたんよ。よろしくな」
炎「はぁ、よろしく・・・」
レ「そんじゃ、まあ。俺は行くだもんよ」
炎「ああ、はい。さいなら・・・。なんだったんだ?」
シェイカ(以下・シェ)「レイー。どこいったんな?」
炎「あっ、どうも」
シェ「ああ、こんにちわ」
炎「レイだったら、さっき・・・ってもういない」
シェ「あ、さっき居たんな?あの子、お弁当忘れていったんな」
炎「大変ですね。それ」
シェ「これなんけど」
炎(うわっ、花柄・・・。これじゃ恥ずかしいよなぁ。レイも・・・)
シェ「届けてくれると、うれしいんな?」
炎「あー、ごめんなさい。あいつが行った所わかんないッス」
シェ「そうなんな?はぁ、しょうがない子なー」
炎「ふぅ、あきらめて帰っていった。よかったような。良心が痛むような・・・」




