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第一話 彼女の選ぶ未来

 

「はっ………はっ………!」



真っ暗な森林。

数多くの木々が行く手を阻む。


大きな根が剥き出しになっていて、時々走る足を軽く掬う様によろめかせる。


後ろを振り返る。

共に来ていた兄はいない。


黄色い閃光や赤い一筋の線が彼女めがけて飛んでくる。

屈む事でギリギリ避けるが、近くの大樹に当たり爆ぜ、体を浮かす。


直ぐ近くの木に背中を強く打ち付ける。

肺の中の空気が一気に口から流れ出る。



「かっ、は………!?」



そのままずるずると汚い地面へ倒れ込む。


腕に力が入らない。

目が少し開かなくなってきた。

意識が朦朧とする。


このままではいけない。

いつ命を絶ってもおかしく無い。

生きたいという本能だけで体が自然と動き出す。


震える足で地面を捕え、おぼつかない足取りで走り出す。


せめて、連合国領土に入れれば。

知り合いに助けて貰えるのに。



「―――亡命なぞ――――るな――」


「…ッ!……いや…ッ!!」



足音と声に反応し、再び走り出す。

ドンドン、と体を木々にぶつけながら、必死に足を前へと伸ばす。


もうすぐ。


もうすぐの筈。


もうすぐ、連合国領土に入る筈。


僅かな希望を望みながら、走る。

 

殺されるのは嫌だ―――



「……あった……っ!!」



小さな旗が夜風に揺れているのが見える。


連合国の国旗だ。


顔に僅かな輝きを取り戻し、翠色の瞳を木で出来た国境門へ向ける。


足取りが今度こそ重い。

目が開かなくなってくる。


国境門へ辿り着くと、特に監守の様な者は存在は無く、連合国側から鍵がかけられている。



「なんで…!………なんでよぉ!!」



ドンドンッ!!と木の門を叩く。

乾いた音が夜の森に響く。


それでも門は開かない。



「助かるって思ってたのに……!!なんで開かないのッ!!」



手に血が滲む。

意識が薄れる。

足が折れる。


目が閉じる。

力が抜ける。

意識が―――――― 









「………んっ………?」



目が覚めたらそこは布団の中だった。


額には、濡れた布が置いてあり、近くには冷めたお粥が置いてある。


布団の中を良く見ると、何も着ておらず、体中に包帯や湿布が張られていた。


トットットッ……、と足音が外から聞こえてきた。

彼女が布団を引き寄せ、軽く身構えると同時に扉が開く。



「フロウ!!目が覚めたか!」


「……!四陰……?」



彼女―――フロウリス=レイは引き寄せていた布団に込める手を緩めた。


彼は四陰三鷹≪よかげみたか≫。

フロウリスが幼い頃に世話になった事のあるヒューマンの男だ。


四陰の手には、女性モノの服が握られている。恐らく、着替えを持ってきたのだろう。


四陰の顔には安堵の笑みがうっすらと浮かんでいた。



「何で………四陰が…?」


「何でじゃねぇよ。約束の時間を過ぎても来ねぇから、国境門を開けてみたらお前が倒れ込んできたの」



四陰は適当に持っていた服をフロウリスに投げると、着替えな、と呟きながら部屋を出た。


とりあえず、服を身に着ける。ヒューマン文化の衣服は少し違和感があった。


部屋を見回す。

鏡や小さなタンス。

開きっぱなしな窓。


窓の外には桜の木が見えていて、風が吹く度に花びらが舞う。

ひとひら、ふたひら、部屋の中に流れ込む。


ノックが聞こえる。

適当に、いいよ、と答えると、四陰がバックを持って入ってきた。

四陰は小さなバックを2つ持ってきている。



「お、ちゃんと着れた見たいだな。おっし、準備すっか」


「……準備って?」



フロウリスは小さく小首を傾げる。

四陰の服装は、私服と言うよりも、なんだか堅苦しい様な感じがしている。


ヒューマンの文化はイマイチ解らないが、ふと思うと自らが着ている服も、四陰の着ている服装にどこぞなく似ている様な気がする。



「…何って……学校の準備だよ。今日は入学式だろ」


「あ………そっか」



ようやく納得する。

こちらに亡命して、学校へ通う事にしていたのだ。


申し込みは手紙と四陰がしてくれて、後は入学式に行くだけである。

バックの中には必要最低限の物しか入ってなかった。


バックを持ってドアを潜ると、そこはただっ広い廊下が続いていた。

ここは学生寮。先程までいた部屋はフロウリスの部屋となっていて、直ぐ隣の部屋には四陰の表札が出ている。



「よし、行くかっ」


「うーん………何か納得いかない様な………?」



うんうんと悩むフロウリスを尻目に四陰はどんどん先に歩いて行ってしまった。

軽く小走りに後を追うと、顔に朝日が当たり目を細める。


やっぱり、納得いかない。


「ねぇ……私、どのくらい寝てた……?」


「ん?4日だ4日」


「4日っ!?」



予想外の出来事に思い切りたじろく。

対する四陰は、がっはっはっ!!と豪快に笑い、また先に歩いてしまう。

どうやらフロウリスが眠っていた間に、手続き等は済んでしまった様だ


なんだか色々ありすぎて、溜め息が出た。

隣にいる四陰は気にしている様子は無く、豪快に笑っていただけだった。


しばらく歩くと、目的地が見えてくる――――――

どうも、5人の作者の内の一人、ラプター50でございます。私が書く、フロウリス視点のお話は全て「彼女の〜」で統一させていただきます。自分はまだ文学の力も無く、理解できないところもあるかも知れませんが、よろしくお願いします。

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