第四話 彼女の友達
しとしとと雨が降る夜、国境の境となる国境門に一人の男が立っていた。
彼はただ独り、ひたすらに人を待っていた。
『この生活に、もう耐えられない。そっちに行きたい』
あの手紙を読んだ直後、一瞬胸が高まった。
とにかく、手紙を書いた字はふにゃふにゃで。
封筒に入っていた紙切れはぐしゃぐしゃに濡れていて。
『なら、こっち来い。お前の居場所を、この俺が作ってやる』
そう送り返した―――と思う。
学校の手配は済ませ、学生寮の部屋は既に用意した。
後は彼女を迎えるだけだ。
しかし、彼女はいつになっても来る気配は無い。
聞こえるのは、雨が地面や木々に当たる音だけで。
人の気配すら感じられない。
木でできた国境門に近付いてみる。
近くで見ると、かなりの大きさ、厚さで。
向こう側の音など聞こえそうに無くて。
そこで気付いた。
この厚い扉の向こうから彼女は来るのに、どうやって合図を?
そう感じた直後に彼は動き出す。扉には鍵がかかっているようで、びくともしない。
大きな南京錠のようなものが止まっていることに気付く。
彼は迷わずその鍵を鷲掴みにし、引きちぎった。
かなり重たい引き戸を思いっきり引く。
ギギギ…、と音をたてて開いた扉の向こう側から、何かが倒れ込んできた。
金色の髪を持った彼女は気を失っていて。
目を瞑った顔からは明らかに疲労した表情が滲み出ていて。
「フロウッ!!おい、フロウッ!!大丈夫かッ!?」
大声をあげて肩を持っても彼女は目を開けなくて。
気を失っているにも関わらず荒い呼吸をしていて。
彼女の疲労っぷりはあまりにも酷くて。
「………貴様か、四陰三鷹。我が娘をたぶらかしたのは」
「………テメェ」
話しかけてきた黒いローブの男の手には、赤い炎が宿っていて。
殺意の感じる空気を作り出していて。
そのローブの男はフロウリス・レイの親でいて。
「ふ、」
フロウリスには沢山の傷ができていて。
服は少し焼け落ちていて。
ふつふつと怒りがこみあがってきて。
もう感情が抑えられなくなって。
「ふざけてんじゃねぇぞぉォォオオオオオッ!!!」
叫びをあげた頃には彼は走り出していた。
ヒューマンにしては足がかなり速い彼は、目の前の黒いローブの男に一直線に走る。
右拳を岩石の様に握り、体制を思いっきり低くする。
屈めた頭の上には赤い熱線が通り過ぎた。
後一歩で間合いに入る瞬間に右に跳ぶ。彼が立っていた場所には黄色い雷が降り注ぐ。
体を捻り、ローブの男の顎目掛け拳を振り上げる。
後少しで拳が当たる寸前に間に氷が割って入る。振り上げた拳は氷に命中した。
だが彼は諦めない。
一発で魔術で作った氷にヒビを作り、尚且ヒビに向かいもう一度拳をぶつける。
ボロボロになった氷に更に拳をぶつける。彼の血に濡れた拳は氷を突き破りローブの男に命中した。
並みの力では無い威力の拳を喰らい、ローブの男は一度宙に舞う。が、直ぐに空中で体制を直す。
着地した直後に後ろに大きく跳びながら門の向こう側へと移動する。
「―――必ずや裏切り者を始末する。忘れるな」
「テメェッ!!逃げんのかァ!!」
「頭に血が昇った君では私に勝てんよ。だが予定が狂った。今は退かせてもらう」
息を荒く門を睨み付ける。
黒いローブが暗い森の中に消えていくのが微かに見えた。
彼は特に深追いをしようとせず、気を失った彼女の元へ駆け寄った。
直ぐに抱き上げ、走り出す。
「―――もしもし!美月か!?」
『兄さん?こんな遅くに何処に行ってるんですか?』
「そんなことはいい、急いで手当ての準備をしていてくれ!」
『…!………わかりました、後で事情を話してくださいよ?』
物分かりのいい妹を持ってよかったと思う。
彼は携帯をポケットに捩じ込み、夜の道を走る。
全ては彼女を守る為に。
ラプター50です。行間ですね。あまりにはしょりすぎたんで書くことにしました。さて、最近凄い閲覧数が増えて来ました。だけど評価が0ってのはなんかむなしいですね。なんでもいいので、評価を頂けると今後の為にもなりますので、一言お願いします。ではここら辺で筆を置かせていただきます。




