3話 だから、私達は飛び立つ
「鷲沢君」
帰宅中、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「...物好きだな、北御門」
「ここにいれば静かだから。いいでしょう、一緒に帰っても」
「...なんて押しつけだ」
「今頃気づいたの?」
「――そういえば、なんで自己紹介の時、あんな笑っていたんだ?」
「だって、面白いんだもの」
「...?」
「種族が違って、差別もなくて、みんな個性があるでしょ。まあ、深い関わりを持つ事はないだろうけれど」
「変なヤツだな」
「女の子に言うセリフじゃないと思うわ」
―――――ねぇ、ゆうと。差別って、何であるんだろうね。
(差別...か)
「―――何か言いたげな顔してる」
「何度も言うが気のせいだ」
「そう?短い人生、言いたいことは言っといた方がいいわよ」
その後、特に会話もなく帰り道を歩いていく。
「じゃあ、私はこっちだから」
「...そうか」
「素っ気ない返事ね。まあ、いいけれど」
そう言って、北御門は帰って行った。
しばらく歩いていると、姉、華鈴から「おかえり、入学式どうだった?ま、今日はゆっくり家で休みな」とメールがきた。
「特に何も。言われなくても、そうさせてもらう」と返信し、携帯を閉じると丁度計ったように再びメールを受信した。
(―――瑠美からか。なんで皆同じことを聞くんだろう)
――――――――――――――――――――――――――――
「瑠美ー、なんでそんなご機嫌なの?」
「えへへ、秘密だよー」
瑠美と呼ばれた少女は口に人指し指をあて、「しーーっ」と微笑んだ。
「んーー?入学式だったからー?」
「ぶぶー、美佳、残念」
「......鷲沢くん、..でしょ」
「ああー成程!さすが結歌ー」
「.....好きだった人の事は忘れない」
結歌と呼ばれた方が、顔を赤らめる。
瑠美は「エ...。」と、いかにも御名答です結歌サン、という顔を浮かべる。
「そういえば、結歌は最後まで鷲沢に告んなかったなー」
「だって......、」
「...瑠美さんにとって邪魔にな「そんな事ないよっ!」
慌てた様子で瑠美が言葉を遮る。
「おやー、瑠美、鷲沢のこと好きじゃなかったの?」
「そ、それは...」
「もしかして付き合ってたり?」
「そ、そんな訳ないでしょっ!」
今度は瑠美が赤くなる。
「おやおやぁー、瑠美どのぉー、真っ赤でござるよー」
「わたしの拳が、後で話があるってよ、美佳。こう見えてもパンチには自信が―――
「うぁ、ギブです」
「...ほんとうに、つきあってない?」
結歌が、もじもじしながら聞く。彼女らしくないなぁ、と微笑する。
「もう、結歌まで...。ほんとだってば」
...ん。
「そういえば、恋情なんて抱いたことなかったなぁ」
「え、鷲沢好きなんじゃないの?」
「じゃ結歌、わたしはこっちだから。ああ、 美 佳 は 無 条 件 の 拒 否 権 な し で こ っ ち」
「...うん、また今度ね」
「待って!?このままだとあたしには『また今度』がない気がする!」
美佳に逃げられた後、わたしは歩きながら考え込む。
(恋情...ねぇ...。ゆうとに対するやつは...多分―――
「ゆうとっっ!?」
「...道端で会っただけなのに、五月蠅い幼馴染みだ」
「い、いや、その、考え事で、諸事情で、むぁー!」
「...?」
「何でもないっ!一緒に帰ろっ!」
―――――――――――――――――――――――
「あの...、さ」
しばらく歩いて、わたしは思った。
「何だ」
「重い顔、しなくなったね」
「...?」
「いや...、そのさ、わたしがさ、あの怪我したじゃん。あの時からずっと重い顔してたけど、今はなんか違うんだ。何て言うんだろうなぁ...」
しばらく考え込んだ。何か軽くなった感じ...、
「―――何か解放された感じ?っていうのかな」
「解放...?」
「うん。もうほぼ後悔してないって顔。飛べるようになった鳥、って感じ?」
そう言って、わたしはエヘヘッ、と笑った。ちょっと幻想的に言いすぎたかな...
「飛べるようになった鳥、か...」
...あれ、真に受けてる?でも、まぁいいかな。
過去があったから、今があるんだ。
わたし達は、もう一人で飛び立って行ける。
いや、もう飛び立っているんだ、きっと。
―――翼なんて、無くたって。
はいどーもー箱入り巴ですよ。
最近ゼリー不足ですよ。ヤバいですよ。誰か恵んでくださいな。
―――過去があるから現在があり、未来がある
えーsound horizonっすね。すばらしいよ?うん。
ではではまた次回お会いできたら。




