三話:入学式開始か?
「やばいんよ。入学式から遅刻か?」
今、レイは猛烈に走っていた。風呂に入って、朝ごはんを食べ、時計を見ると外出予定時刻をすでに越していた。
(いつの間に、変わっていたんだろう。まさかのミステリーだ・・・)
と真剣に悩んでいるが、ただたんに時計を見るのを忘れていただけだったりする。シェイカも、いきなり叫び声をあげたレイを見て、驚いていたが、時計を見て、
「ああ、忘れてたね」
と、けらけらと笑いながら息子の慌てようを見ていたのだが。
そして、レイは走りながら目の前に迫る校門を見て
(よかった。間に合ったんよ・・・。っていうか、これは城?)
とかかなり大きな学園を見ながら思っていると、クラス別けの表の所に、人だかりが出来ていた。
(なんだ。ぜんぜん余裕じゃんよ)
そう思って、走る速度をゆるめ始めた時、不意に視界の端に淡い光を放つ少女が入った。人だかりから少し離れた場所で入学で浮かれている生徒たちの様子を見ていた。
(あんな、所にいたら見れないじゃんよ)
そんな風に、余所見をしていると急に足元が払われた。
「うぇ?」
そこは、クラス表の目の前。思考がめぐる前に、
ゴンッ
思い切り柱に頭を打ち付けるレイ。彼の長い赤色の髪が大きく広がる。
「いたい・・・」
人だかりの外から、ガンゴンッと戦闘音のようなものが聞こえてくる。顔を大きくしかめながら、ゆっくりと立ち上がる。一気に分かれた人だかりの真ん中に立ってぶつけた顔面を押さえているレイに、数人が「大丈夫か?」と声をかけてきたが、それに軽く手を上げて答えた。少し痛みが治まって手を離し、目の前にあるクラス表を見た。
どうやら、レイはC組のようだった。
それを確認して、また痛み出した顔を押さえたると、隣にさっきの発光少女(勝手に命名)が立ってクラス表を見ていた。
(この子、いつの間にきたんよ。さっきまで結構離れてたのに)
そのまま、彼女に見入ってしまったレイの視線に気づいたのか、少しだけその少女はレイに視線を向けると、
「アホ面ね」
と、つぶやき学園の中に入っていってしまった。
レイは、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしてしばらく思考が停止したように立っていたが、はっ、とわれに帰り彼女の言った言葉を考え、
「いきなり何いうんよ。あいつ」
そうつぶやいて、彼も彼女のあとを追うように学園の中に入っていった。
ここ「蒼城学園」は、まるで西洋の城のようなつくりの大きな学園である。連合国フェデラチアのなかでも、1・2を争うほど大きな学園で連合国ならではの、多種族の生徒がいる。ごくまれに、種族差別をする生徒もいるそうだが、「この学園に入ればそんなお悩みも解決!!」だそうだ。(パンフレット参照)
と、まあそこに入学することになり、レイも多少ながら楽しみにしていたのである。
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「――――C組入場」
きらきらと光るフラッシュ。大きく掲げられた蒼城学園のエンブレム。多くの種族の保護者たち。皆それぞれだ。
(眠いんよ・・・)
レイはこういう場所は苦手だった。人の数倍くらい早く睡魔が襲ってくる。たぶん、睡魔から見るとレイは格好の獲物なのだろう。
「―――――学校長、挨拶」
その言葉を聞く頃には、もう彼は睡魔に身を任せていた。
―――――――――――――――――――――――――――――――
教室に入り適当な場所に座る。どうやら一人一人に電子パネルがあるようだ。
「おお、すごい・・・」
ポツリと一人だけうれしそうにしているレイ。
(これなら、いじりがいがありそうなんよ)
と、楽しい想像に浸っていると、教卓にたった担任が話し始めた。
「皆、席についていますね。私は担任の宝仙音葉です。これから、このC組の担任を務めさせてもらいます。どうぞよろしく」
(女っぽい名前なんねぇ。珍しい男なんよ)
そんな風に思ったのは何人くらいいたのだろう。以外に整った顔立ちの男教師は、皿に続けた。
「とりあえず、〈パートナー〉について軽く話させてもらいます。
―――さて、本校のガイドブック等によく目を通した人は知っていると思いますが、ここ蒼城学園兵士養成科では課外授業を取り入れています。その際共に行動するのが、パートナーです。
組み方はいたって簡単です。パートナーとなる人を決めたら、書類にパートナー同士承諾のサインを記す。
もちろん、誰にも頼らず一人で鍛えるのも悪くないでしょう。が、パートナーと共に行動し、鍛えあうことで、協調性を養うことも大事だと思いますよ」
「うへぇ、めんどいんよ・・・」
周りに聞こえないようにぼやきながら、そのパートナーになりそうな人物を探し始めた。それぞれ、隣が仲がいいようでぼそぼそと何かしゃべっている。
(これは、決めるのに苦労しそうなんよ・・・)
そんなことを考えながら、げんなりしていると、クラスの中に先ほどの発光少女がいるのに気がついた。
(なんだ。あいつも一緒のクラスなんよ)
軽い感じで考えていると、
「それでは、しばし休み時間となります。この間に友達と話す、パートナーや友達を作る、電子パネルの内容に目を通す、などしてもいいかもしれませんね」
そう、教師が言うとそれぞれ席から立ち上がりパートナー探しを始めたのか、教室内が一気に無政権状態になる。
「おーい、そこのドワーフ・・・かな?赤い髪の」
そう、声をかけられて振り向くとそこにはヒューマンの男が立っていた。
「俺とパートナー組まない?組むやついないんだよなぁ」
「んー」
いきなりのことでかなり驚いたが、かなり友好的な少年のようだ。
「お前、名前は?」
「ん?クレン=ウェイダ=レイ。ドワーフなんよ。レイでよろしく」
「おお、俺の名前は、九条 クイル。ヒューマンとエルフの混血だぜ。それでどうする?俺と組まないか?」
「んー」
とレイは適当に考えながら視線をめぐらせると、さっきの発光少女と目があった。彼女の周りには、数名の男が集まっていてそちらもパートナーに誘われて困っているようだった。
(まあ、俺には関係ないんよ)
そう考え、もう一度クイルに視線を向ける。彼は「待て」をされた犬のような目でこちらを見ていて、断りづらい。
(うーん、クイルでいいんかなぁ。また、探すのめんどいしなぁ)
そう心の天秤が傾きかけたその時、また後ろから声がした。
「お生憎さま。彼は私とパートナーを組むの」
「は?」
間の抜けた声を出して後ろを向くと、そこには発光少女が微笑を浮かべて立っていた。その後ろには、さっきの男たちがレイをにらみながら立っている。
「・・・なに言ってんの?」
「隣いいかしら?」
(無視なんよ?!)
心の中で突っ込みを入れながら、空席だった隣の席に座る発光少女。一方クレイは少し残念そうな顔をして、
「そっか。もう決まってたのか。まあ、同じクラスだからよろしくな」
と言い残し、どこかへ去ってしまった。
(ちょっ、待ってくれなんよ。この状況で見捨てる?!)
さっきの男たちからはにらまれる。隣の少女は気まずい雰囲気をかもし出している。
「このクラスが、敵になったんよ?!」
「?。なにを言ってるの?」
少女のほうは薄い笑みを浮かべたまま人形のように座っていた。
その時、チャイムが鳴りなんとか男たちのにらみつけからは開放されたのであった。
そして担任が戻ってきて、
「皆、席についていますね」
と前置きをした。
「何考えてるんよ。お前とパートナーの約束した覚えないんよ」
小声で隣の、発光少女の話しかける。
「私もありませんわ」
「はぁ?だったら、なんで俺の所にきたんよ?」
「だって、あの男の方々しつこいんですもの」
「しつこいって、お前、」
「お前じゃないです。シェレン・クワイスという名前があります」
「それも初めて聞いたんよ・・・」
と、口論になっているうちに話は進み、
「入学式で精神的に疲れたとは思いますが、もうひと踏ん張り。この時間は、自己紹介をしてもらいます」
その言葉に、レイは思い切り本音を言ってしまった。
「うへぇ。めんどくさい・・・」
多少小声ではあったものの、シェレンには聞こえたらしくクスクスと笑い声が聞こえる。
「では、適当にその辺から」
その言葉で、蒼城学園C組の自己紹介は始まった。
どうも、炎道です。3話は、入学式。さあ、次回の自己紹介はどうなるのかな?
レイは微妙にドジッ子みたいな感じで書いていきます。
レ「なんなんよ。それ」
炎「あらら、聞いてたか」
レ「ふざけんななんよ!」
炎「まあ、しゃあないんじゃない?」
レ「なんでなんよ!」
炎「血かなぁ」
シェ「呼んだんな?」
レ「か、母さん・・・」
シェ「どうしたんな?レイ。ショックを受けたような顔して」
レ「そうか・・・。これのせいか・・・」
炎「そうです」
シェ「よくわからないけど。またなのね」




