1人と1羽
死を選んだ少年と真っ白なうさぎ
1人と1羽のなんの変哲もない会話を綴ったおはなしです。
起承転結なんて大層なものはご用意できませんが、心が疲れた貴方へ
僕は自殺をした。
高校生の最初の夏休みの最終日、僕は死んだ。
理由は学校に行きたくなかったから。
学校に行ったら、きっとまたみんなに無視をされる。
あんなに大勢の人がいる建物の中で僕はいつも1人だ。
それでも1日7時間程、あの空間であの空気に耐えなければいけない。
その空間から逃げ出して、学校に行かなくなると僕が悪になる。
僕の生きていた世界はそんな理不尽な世界だ。
だから僕はそんな理不尽な世界から逃げ出す事にした。
自分の部屋で首を吊った。
ネットでは苦しくなんかないって書いてあったけど、そんなのは嘘だ。
苦しかった。死ぬほど苦しかった。
自分が生きてるってあれほど強く感じたことは人生で無かったと思う。
そんなことを考えていたら僕は死んでいた。
そして僕は今、ここにいる。
何も無い、ただただ真っ白な空間。
気が狂ってしまうのでは無いかってほど何も無いし何も聞こえない。
ただただ真っ白な空間。
だけども不思議と気が狂う気配もなく、心は落ち着いてる。
もしかしたらもう心なんて無いのかもしれない。
なんて考えながら僕はただその真っ白を眺めていた。
どれくらいの時間が経ったのだろうか、もしくは時間なんて経っていないのか、僕はただ真っ白の中にいた。
ここは天国なのだろうか地獄なのだろうか。
人生という時間を粗末にした罰として、こんな空間を与えられたのか…
いや、それにしてはなんの辛さもないから天国なのだろうか。
そんな考えることも無駄なようなことを考えていると、不意に目の前の真っ白の一部が揺れたような気がした。
「え?」
僕はここに来て始めて声を発した。
どうやら声は出るようだ。
僕はその真っ白に近づいた。
そして、
「誰か居るんですか?」
僕は尋ねた。
するとそこに姿を現したのは
一羽の真っ白なうさぎだった。