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端の槍  作者: 河合 奏
1/3

プロローグ

夢と憧れは違う。




夢は、歩み続ける人達の為にある。



努力を積み、

理想へと向かって長い階段を駆け上がる。


どれだけ挫けようとも

起き上がって前だけを見ている。

後ろを振り返らず、貪欲に進み求め続ける。



そんな人達が語るべき言葉だ。




反対に、


憧れというのは

理想へ近づくことを諦めてしまった人間が使う言葉だ。



ただ理想を語り、

光も入ってこない孤独の世界で

見えもしない上を見上げて、

いつか輝くであろう自分を想像しながら

その場に留まっている。


失敗を恐れて目の前の階段へ踏み出すことができず、

上から転がってくる何かを待ち続ける。



そんな凡人が語る理想が、憧れというものなんだ。





私も、昔は夢を夢と語れる人間だった。


将棋会館に行っては

ひたすら研究会のメンバーと駒を叩き合わせ、

家に帰れば詰将棋に明け暮れた。


食べることを忘れるなんてしばしばだった。

私の世界には八種四十枚の駒と

八十一升の盤の上にしかなかったのだ。


おかげで順位戦でいい成績を残せるようになり、

プロになることができた。


棋王と王位という大きなタイトルを獲得することもできた。


その時私は、

とてつもない自信と

味わったことのない満足感に包まれていた。


夢という果てしない階段を

しっかりと登っている実感を

確かに感じていたんだ。




だが、荊が私の歩みを止めてしまったのだ。



何者にも負けんとする自信に満ち溢れようとも、

深淵を覗き、境地へとたどり着かんとしようとも。


歩みを進めるたびに

時間をかけて絡め取られ、

足が動かなくなっていく。



そして一度歩みを止めたら、二度と進めない。



後ろを振り返らず、

ただ前へと進むことだけに努力してきた凡才は

止めた足を踏み出す方法を知らない。


荊を振り払う術を知らなかったのだ。





いつかお前も気付くだろう。


しかし気付いたとしても、俺と同じ道を歩まぬように、伝えておく。








それが、大嫌いだった父が僕に向けた最期の言葉だった。

遺書には、遺産相続のことについてと

家族一人一人への言葉が書かれていた。



僕は父とは違う。



理想へと近づく努力をして、

何度も何度も挫折して、

血反吐も吐いた。

夢半ばで諦めなんかしない。



ただ、僕にも憧れはあった。



盤の前に座る丸い背中に憧れて、

いつか、カメラが入ってテレビ中継されるような試合で

親子なんてことを忘れるくらい

白熱した指し合いがしたくて、

同じ階段を登り始めたんだ。



父を追いかけて今まで生きてきたんだ。


俺は親父とは違う。





僕が生きてきた中で最大の大舞台、

竜王戦七番勝負最終局。



梅宮現竜王との対局中に

気分の悪くなるようなことを考えてしまっていた。

将棋はあまり詳しくはないので描写が少なくなると思います。

また、初執筆なのでペースも遅いです。

投稿を楽しみにしていただけるのなら、

気長にお待ちいただけると嬉しいです。

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