紅葉
逢いたいと思うこの気持ち
ため息と一緒に吐き出して
近くの緑を黄色く染めよう
淋しいと思うこの気持ちも
ため息と一緒に吐き出して
黄色の隣を紅く染めよう
そして
悲しみや切なさは
一滴の雫に変えて
木枯らしに乗せてしまおう
その木枯らしは
色褪せても尚しがみ付く
未練な茶色い葉っぱを
呆気なく吹き飛ばし
大地に戻してくれるだろう
そこでやっと私は
深い眠りにつく
過ぎ去った人や
届かなかった思いを
少しだけ記憶したまま
暫し夢の世界へ……
次に目覚めたとき
私はきっと
失っていた優しさを取り戻し
笑顔の似合う女性に
幸せの似合う女性に
なっているかな
なれたらいいな
そんなことを考えながら
また一つため息を吐く
今度は少し軽やかに
そして少し遠くまで
あなたの住む街の緑を
色鮮やかにするために
でも一滴の雫は乗せないよ
あなたにはいつまでも
その景色を眺めて
私を感じていて欲しい
あなたの人生に
少しだけ色を残した
小さな小さな存在として
あなたの記憶の隅に
そっと根付くまでね
〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜
私の古くなった携帯には
一枚の山の写真が残っている
色鮮やかに衣替えをしたその写真に
人物を入れることはない
どんなに綺麗な景色を前にしても
そんな思い出の残し方しか
私には許されなかった
そこまでして守るものは
貴方の日常と
私の細やかな幸せ
この一枚の写真を眺めながら
何度もあの時間を思い出し
何度も削除に指を掛けた
新しく買い替える携帯に
古い写真の入ったカードは邪魔になる
だから
私は今頃になって
この写真を懐かしく眺めている