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123.ラングミュアの少女騎士

123話目です。

よろしくお願いします。

「デニス、まずは船の方へ突破する!」

「わかりました!」

 ヴェルナーはデニスとイレーヌだけを連れて開けた海岸へと駆けだした。

 アシュリンやブルーノはオータニアやミルカたちを護衛するために森へ残り、状況に応じて参戦する。ヴェルナーが爆破をするための邪魔になるのを避けるためでもあった。


「あんな少人数で大丈夫なんですか?」

 森から様子を見ているオータニアが呟く。

 森林から来た戦士たちは百人を優に超える人数であり、上陸しているラングミュア兵側は二十人程度しかいない。

 しかも、森林の部族たちは弓矢を巧みに使っており、船からの援軍は小舟の上から海岸を見ているしかない状況のようだ。


「心配いらない」

 アシュリンは断言する。

「陛下なら、この程度の敵はいないも同然」

「信頼しているのですね」

「事実だから」


 ほら、とアシュリンが指さした先では、ヴェルナーが振りまいた爆薬が連鎖してはじけ飛ぶ。

 さらにはイレーヌの雷撃が奔り、次々と敵が倒れる。

 デニスはそんな二人を守り、近づいてきた敵を着実に斬り倒していた。

「すごい……」

「感心している場合じゃねぇぞ。俺たちも動こう」


 ブルーノが声をかけ、彼らも動き始めた。

 大回りして集団を迂回し、海岸側に布陣している味方に合流するのだ。森林国側の部隊が森へ撤退した際に鉢合わせるのを避けるためであり、ブルーノたちが武器を得るためでもある。

「こっちからなら回れる」


 海岸周辺をしっかりと調べていたというミルカの先導で森の中を慎重に進み、敵がいない場所から密かに海岸沿いに出た。

 流石に敵から全く見えないルートは存在せず、森を出て味方部隊に合流するのは不可能だった。どうしても、森から出たところで敵から目撃される可能性が高い。

「陛下の爆破で混乱しているうちに、走り抜ける」


「ふむ。ここはアシュリンの意見に従うとしよう」

「危険ではありませんか?」

 レオナがミルカを止めるが、即座に却下された。

「ここで最も強いのは彼女であり、余とお前は従うべき立場にある。任せておこうではないか。では、頼む」


 アシュリンが頷き、オータニアの肩を軽く叩いた。

「ちゃんとついてきて。万が一、矢が飛んできても自分が叩き落す」

「た、叩き落すって……」

「嬢ちゃん。アシュリンが言っているのは事実だぞ。チビッ子だと思って甘く見ていると痛い目にあ、いたたたたた……」


 わき腹が伸びるほど常揚げられ、ブルーノは涙目でしゃがみこんだ。

「冗談じゃねぇかよ……」

「馬鹿は放っておいて、走る準備を。もうすぐ爆発がある……」

 アシュリンの視界の端に、ヴェルナーが一塊の爆薬を自分たちがいる側と反対方向へと投げるのが見えていた。


 恐らくは移動を始めたのをしっかり見ての行動だろう。

 まだ砂浜になっていない、岩がごつごつした部分で激しく弾けたプラスティック爆薬は、小さな破片をまき散らして周囲にいた戦士たちを文字通り打ち砕いた。

「行く」

 走り始めたアシュリンに、オータニアが続き、ブルーノたちに守られたミルカとレオナも走り出した。


 敵は全員が巨大な爆発にくぎ付けにされており、誰一人としてアシュリンたちを見ていない。

「このまま……」

 行けるか、とアシュリンは目的の場所へと目を向けた。

 そこでは、船から半舷上陸したラングミュアの兵士たちが、上陸に使った小舟を砂浜に立てて防御の体勢をとっているのが見える。


 彼らの表情は緊迫したものではあったが、僅かに安堵が見えている。爆発が何者によるものなのか、わかっているのだ。

「気持ちはわかる」

 アシュリンはヴェルナーに対して兵士たちが感じている絶対の信頼感というものに理解を示しつつも、何か危ういものを感じていた。


「それではいけない」

 アシュリンの矜持は、あくまで“陛下をお守りする騎士でいる”という部分にある。ヴェルナーが強いことは理解しているが、だからと言って守られる側にいるつもりは毛頭なかった。

 ただでさえ救われているというのに、騎士としてヴェルナーの後ろにいるような真似はできない。


「行って」

「えっ?」

「敵が来た。自分が止める」

 背負った大槍を手にして、アシュリンは立ち止まった。

 弓を持った者たちは距離が離れている……つまるところ爆心地に近かったためにまだ狼狽のさなかにいたが、近くにいた手斧や槍を持った戦士たちがアシュリンたちに気付いたのだ。


「では、任せる」

「だ、大丈夫なんですか?」

「大丈夫、大丈夫。立ち止まったら邪魔になる。走るぞ」

 ミルカは一言だけ残して走り抜け、たたらを踏んで止まったオータニアを、ブルーノが背中を押して走らせた。


「自分は陛下の臣として、騎士として戦う」

 激しい地響きを立てて一歩を踏み出し、アシュリンは槍を構えた。

「かかってこい。自分の槍はここから誰一人通さない」

 毒にやられて一時戦線離脱していたこともあり、アシュリンは再び戦場にいることに興奮していた。

お読みいただきましてありがとうございます。

ちょっと短めですみません。

次回もよろしくお願いします。

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