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 もはや考えても無駄だ。

 こんな真っ白な世界に放り出されて何が出来る。どう抗える。


 私はぺたりとその場に座り込んだ。


 人が見えなくなった。

 そんなもの、この世界に比べたらかわいいものだ。

 妻を見失ったと思ったら、世界ごと見失った。

 あまりにもふざけすぎている。


「恵理」


 自然と妻の名前が零れた。

 きっと、罪だ。全ては罪だ。

 君をないがしろにしてきた私の罪だ。

 当たり前の幸せを大事にせず、君が見えない事すら都合よく思ってしまった私の。


「こんな俺の、どこがいいんだ」


 答えられるわけがない。

 そんなものはない。どこにもない。

 

「すまない……私は……」


 全てが見えなくなって、全てを見失って、ようやく気付いた。

 世界が消えて気付くだなんて手遅れも甚だしいし、どうしようもない。

 

 その時、ふっと私の肩に何かが触れた感触がした。

 なんだと思い、手を伸ばす。


「えっ……」


 肩に触れたはずの手は、違う温もりを感じ取った。


「朝人君」


 肩からじわりと、温度が全身を伝っていく。

 ここちよい、暖かさ。


「……恵理?」


 振り向くと、そこに恵理がいた。

 見る事が叶わなかった、恵理の笑顔があった。


「良かった、見えてるんだね」


 妻の顔を、久しぶりに見た。


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