(7)
混乱。
助けてくれ。
誰でもいいから、助けてくれ。
私は再び恵理を呼び出そうとした。
「え……?」
全身が固まり、身動き一つ出来なかった。
一体今、何が起きてる。
携帯の中に、恵理はいなかった。
それどころか、友達として表示されていた者達は一切消えていた。
指が小刻みに震えはじめた。
おそるおそる電話帳を開く。
ない。
何もない。
誰一人いない。
着信履歴、発信履歴も見た。
ない。
やはり、ない。
呼び掛けたはずの恵理の履歴も残っていない。
何かが起きている。
とんでもない何かが。
だが、それに抗うだけの気力も気概もまるでなかった。
今起きている出来事を、まるで脳が理解していない。処理出来ていない。
訳が分からない。
私はふらふらと、玄関の戸を開けた。
「――」
とんでもない事が起きている。
それに間違いはない。
でも今目の前が起きている事は、間違いであってほしかった。
「まだ、夢なのか。ここは」
扉を開けた。
そこにはいろいろなものがある。
家や、電柱や、道路や、車や。
それぞれの世界がそこにある。
あったはずだった。
夢か現か。
私の目の前には、知っているはずの世界の代わりに、無限に広がる白しかなかった。




