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 近すぎると分からなくなったり、気付かなったりするものがある。


「俺のどこがいいんだ?」


 付き合っていた時、結婚してまもなくの頃。

 私は何度もその疑問を恵理に投げかけた。

 好意を持ってくれている事は、空気だけでも十分に感じ取れた。だが、肝心の根拠が見えなかった。

 不安だったわけではない。単純に理解出来なかったのだ。

 決して男前な顔立ちではないし、これといった特技があるわけでもない。性格も悪くはないかもしれないが、良いと胸を張れるほどのものでもない。

 恵理が横にいてくれる事が嬉しくありながら、不思議でならなかった。


「朝人君って所」


 決まって恵理は幸せそうな笑顔でそう答えた。その度私は困り笑顔でだからそれが何かって聞いてるのにと返す。しかしその先に答えはない。

 けど、それは照れ隠しでもなんでもなく、それが彼女にとっての本当の答えなのだろう。

 そう自分を納得させてから、私は二度とこの質問はしなくなった。


 私が私である事。


「……恵理?」


 休日の朝。

 私は、久しぶりに妻を呼んだ。

 

 朝のおはようがない。

 恵理の気配がない。

 

「ん?」


 テーブルの上に小さなメモ紙が置かれていた。


 “しばらく、家を離れます”


 全身の血から、温度が消えていった。


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