まるで密会
「昨晩はありがとう…真太」
翌日の昼、真太は美緒を呼び出した。
「どういうつもりだよ」
「何が?」
真太の言葉に、美緒がしれっと返す。
「あんな言い方…、舞子を追い詰めるだろ」
「でも、本当のことだし…」
「美緒は美琴と暮らしたいから…」
真太は苛立ちながら言う。
「ええ、暮らしたいわよ。美琴は私の娘だし…」
美緒が言いながらコーヒーを飲む。
「でも…舞子さんには新太くんとあなたと幸せに暮らしてほしいのも本音よ…?」
「美琴がいたら、きっと舞子さんは私の存在をいつまでも忘れられない」
美緒は、真太を見つめて切なそうに微笑む。
「真太のことを奪った最低な女よ…?」
「そんなこと言うなよ…」
「早いとこ、美琴に本当のことを話して…私のもとに来させるべきだわ」
美緒は、話を終わらせようと席を立とうとする。
「俺が、君に同情して父親になったって…本気で思ってたの?」
真太は、苛立つ原因を…美緒にぶつけた。
「思ってないわよ……って言っても仕方ないでしょう?」
立ち上がると、美緒が真太を見下ろして言う。
「貴方は、舞子さんを選ぶべきだった、本当はあの時に…」
「美緒…」
真太が切なそうに美緒を見つめる。
「ごめんね、巻き込んで…」
美緒が笑顔を作って言う。
「こうして会うのもやめましょう…これじゃまるで密会してるみたいだわ」
(さようなら…真太。幸せになって…―――)
美緒が立ち去る背中を、真太は見つめていた。
(美緒…)




