対面する
「え…ーーー?」
そこにいた女性を見て、舞子は言葉を失った。
「こんばんは…、美琴さんの“お母さん”…」
困ったように微笑みながら、頭を下げるその女性は…―――。
「貴女が…美琴の…」
(美琴の事務所の社長さん…が?)
「座ろう、舞子…」
真太が舞子の背中をそっと押してレストランの席に着かせる。
「―――美琴に近づいたのは…」
舞子が疑うような口調で言いかけると、
「違います、あの子に逢ったのは…本当に偶然で…」
慌てて美緒が否定する。
「あり得ないだろ、記憶が戻ったのは最近なんだから…」
真太も美緒のフォローをする。
「記憶がなくて…美琴のことをずっと放っておいて…今さらこんな話、舞子さんには不快な思いをさせると思ってます。」
美緒がうつ向きながらポツリポツリ話し出す。
「今まで…美琴を育てて下さって…ありがとうございました」
そう言って美緒は、深々と頭を下げる。
「やめてください、私はまだ美琴を貴女の所に渡すだなんて言ってません」
舞子は、そんな美緒に冷たく言い放った。
「美琴は、私の娘です。血が繋がっていなくても、これからも私の娘です。」
「いえ、瀬戸家の皆さんにこれ以上ご迷惑は掛けられません…」
美緒は、舞子を見据えて静かに…力強く言う。
「美琴の父親は…真太ではありません」
「ええ、真太から聞きました。」
舞子が特に驚くこともなく言う。
「でも、だからと言ってあの子を今さら他人だとは思いませんよ」
「舞子さん…」
(美琴の母親が舞子さんで…本当に良かった)
舞子の言葉は、美緒の胸を熱くした。
「美琴の…実の父親は、日本にはいません」
美緒は、そう言いながら例の雑誌を見せる。
「――――ジョージ・レイ。写真家です。」
「これを撮った人が…美琴の…」
真太が初めて知る真実に、驚きながら呟く。
「でも彼は、…なにも知らないの」
美緒は、寂しく笑って言う。
「―――黙って日本に帰国したから、私。」
(それは、真太の時と同じ。――――あの時…私はまた、居場所を失なった。)
「シングルマザーだったんですね…」
舞子が言う。
「えぇ、でも私は…嬉しかった。…幸せだったんです。」
美緒は、思い出しながら幸せそうに言う。
「美琴が授かって…初めて私は…孤独から解放されたんです…」
(―――美琴がお腹にいると分かって…孤独から私は解放された気がした)
「真太は優しいから、シングルマザーの私に同情して…あの子の父親になってくれました」
舞子の目を見て、美緒は言う。
「でも…本当に愛してたのは貴女だったんですよ、舞子さん」
「美緒?」
美緒の言葉に、新太が戸惑う。
「だから、もう…私たちのことは忘れて…新太くんと真太さんと…幸せになってください。」




