二人の時間
新太がいつものように蛍と街をぶらついてから帰宅すると、
美琴が夕ご飯の支度をしていた。
「あぁ、新太!おかえり」
新太がリビングに顔を出すと美琴がキッチンから声をかける。
「なに、母さんまた仕事で遅いの?」
エプロン姿の美琴を見つめながら新太が言う。
「今日はなんか、パパと外食だってさ!古い オトモダチと会うんだってー」
「ふーん」
「ね、早く食べようよ!着替えてきて」
新太にそう言いながら、美琴がカレーをお皿に盛る。
「はいはい」
クスッと笑いながら、新太は部屋に向かった。
「ねぇ、旅行どっか行くの?」
カレーを食べながら、新太が美琴に尋ねた。
「旅行?なんで?」
美琴が首をかしげる。
「賞品で貰ってたじゃん、律季とどっか行かないの?」
美琴は学祭の時ベストカップルに選ばれたときの賞品のことを新太が聞いているのだと、ようやく理解した。
「あぁ、あれか!まだ決めてないよ、私も仕事あるし」
美琴がそう答えると、新太は嬉しそうにため息をつく。
「なんで?」
そんな新太の様子を見ながら、美琴が聞き返す。
「ていうか、律季から聞けばいいじゃん?」
「律季と…まだケンカしてるの?」
美琴が新太をじっと見つめる。
「ケンカってわけじゃ…」
新太が視線を外して、言葉を濁す。
「じゃあなに?」
美琴が身を乗り出して聞く。
「何って…」
(それを言ったら、困るのは美琴なのに…)
新太はカレーを食べながら、言えずにいた。
「律季と仲直りしてよ、私も嫌だよ…こんなの。」
美琴が寂しそうに言う。
新太は、その表情に弱いのにも知らずに。
「―――美琴はずるい…」
「え?」
新太の声は小さくて、美琴には聞こえなかった。
(俺ばっかり好きで…報われることもなくて…)




