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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第一章】
91/250

美緒の恋物語(Ⅳ)

―――ジョージには…自分の家族の話や日本での過去(はなし)は、したことがなかった。


私には元々家族なんていなかったし、

唯一の存在だった真太には真太の父親の直太に、

“別れろ”と迫られて…言われた通り高校を卒業してすぐに…真太の前から姿を消した。


それから必死に働いて…働いて働いて、お金を貯めた。


誰も自分のことを知らない国に…行ってみたかった。

過去に触れられないところで…やり直したかったのかもしれない。






「ミオ、今日僕の好きな写真家の開いている個展、一緒に観に行かないか?」

「あ、うん…」


ジョージは、私が本気で“モデルになりたい”と思っていないことを知っているようだった。


全くモデルとしての仕事をせずにふらふらと二ヶ月が経っても、追い出そうともせずに二人でルームシェアの暮らしを続けていた。


――――そしてジョージは、

私が日本での過去に触れたくないのを…

まるで気付いているかのように、気分転換にと休みの日にはどこかに連れ出す。




「――――(英語、だいぶ上達したね)」

個展の写真を見ながら、ジョージが英語で言った。


「あ…Thank You…(ありがとう)」

私は恥ずかしくて、ぎこちなく答える。


「(写真…どれもみんな幸せそうね)」

「(うん、そういうとろこが好きなんだ。僕もそういう写真が撮りたいから)」

ジョージは優しく微笑んで言う。



「ジョージは、これを仕事にするんだもんね?」

私が日本語で言うと、ジョージは少しだけ困ったように、

「あぁ、そうだね…」

と、微笑んだ。







「今日は、おいしい日本食の店に行こう、案内するよ」

個展の帰り、ジョージが珍しく夕御飯を誘ってくれた。


「え…」

「ほら、行こう?」

なぜ…私は彼の手をとったのだろう。

恋人でもないのに、自然に繋がれる手に…私は戸惑った。



彼が私の手を引いてやって来たのは、

『琴』という看板の、日本食屋さんだった。


「俺の母は…『琴里(ことり)』って名前でね。

――――なんだかこの店に来ると…母の手料理を食べてるような、そんな気分になれるspecialな店なんだ」


ジョージがそんな話をしてくれた。


ジョージの横顔は、

やっぱり年下のような可愛らしさがあって…私は彼に“弟”のような感情をもった。


「実は今日、Birthdayなんだ…」

そしてジョージは、優しく私を見つめて言った。

「ねぇ、ミオ…僕は君が好きだよ。愛してる」


私の目から、涙が頬をつたって落ちた。

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