美緒の恋物語(Ⅲ)
「Good morning!ミオ、モデルの仕事見つかりそう?」
一週間が過ぎて、驚くほどジョージの家は快適で…、
私は出ていくタイミングを失なっていた。
「だから、なんでそれを笑いながら言うの?」
「いや、ごめん…もう笑わない」
このやりとりは、毎朝の日課になりつつあった。
毎朝、貸してもらっている部屋を出るとすぐの、
共有スペースのダイニングキッチンで、
コーヒーを淹れながらジョージは私をからかう。
「ねぇ、ジョージはどうしてカメラマンになったの?」
朝食は二人でとるのも、日課になっていた。
「なってないよ?これからなるんだ」
ジョージが微笑んで言う。
「は?」
私は意味が分からず聞き返す。
(だって初対面の時は、カメラマンだって言ったよね?)
「僕はまだ…学生だから」
ジョージはそう言うと恥ずかしそうにコーヒーを飲む。
「え?―――ジョージ…今いくつなの?」
「18」
「えっ、ご両親は?」
(18才…つまり未成年。私は24だから…つまり私は六歳も上!)
驚きの連続で、何も言えなくなる。
「父は忙しくて居ない。――――母は亡くなってるんだ…」
「そんな…」
「たからミオが居てくれて…うれしい」
ジョージはふわりと笑って言う。
「え…」
「ニホンゴが懐かしくて…」
(―――私は、彼のことを何も知らなかった…)
なぜ私に声をかけてきたのか…。それはきっと…。
(寂しかったのにね…ずっと一人で…)




