美緒の恋物語(Ⅱ)
「ねぇ、僕の家デ一緒に住まナイ?」
ニコニコと、可愛い笑顔でジョージは出会って5分の私に言った。
「ノーセンキュー」
私はスーツケースを転がしながら立ち去ろうとする。
(こいつ、絶対crazyだわ…)
「どうして?大丈夫、彼女とはちょうど最近別れたし、いないから。部屋も余ってるし、ルームシェアしようよ」
ジョージが後をついて来ながら言う。
「それに、もう夜も遅いしこの辺治安も悪いから、君みたいなカワイイ日本人は危険だよ?」
“危険”…その言葉に足を止める。
(あんたは危険じゃないってこと?)
睨むようにじっと見つめても、ジョージの表情には“善意”しかないように見えた。
「―――あなた、仕事は?」
念のため、素性を聞く。
「僕は…カメラマンだよ。君は?」
ジョージに同じ質問で返されて、私は少したじろぐ。
「私は…モデル希望」
その言葉に、ジョージはお腹を抱えて笑った。
笑いすぎて涙まで出ている。
「なんなの…なんでそんなに笑うのよ?」
(―――なんて失礼なやつなの…)
「だって…英語が通じないくせに…こんなところまで来て」
「う…」
ズバッと言われて何も言い返せなかった。
「――――ジョージはどうしてそんなに日本語上手なの?」
悔し紛れに、私はジョージに尋ねた。
「僕?母親が日本人だったカラ」
初めて笑顔に少しだけ陰が見えた…。
ジョージは気を取り直すように尋ねる。
「あ、君の名前、まだ聞いてなかったね」
「…ミオ」
「頑張ってね、ミオ!」
私が名前を教えると、ジョージは急にあっさりと私に背を向けて行ってしまおうとした。
「―――ちょっと待って」
(―――…なんで私は、引き留めたんだろう)
気付くとジョージにすがる自分がいた。
「ん?」
「ルームシェア…させてください」
(なんで彼の家に…転がり込んだんだろう…)
「良いよ、おいで?」
優しく微笑んで、ジョージは私の荷物を半分持ってくれた。
―――初対面なのに、あの時ジョージにそう言われて…、
私は生まれて初めて、自分の居場所を認めて貰えた気がした。




