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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第一章】
83/250

危篤

「蛍…まだ怒ってるの?」

隣を不機嫌そうに歩く彼女に新太が聞く。

「怒ってないの、別に」

その口調は明らかに怒っていた。


「優勝出来なくて、ごめんね?旅行券なくても、旅行なら行こう?」

機嫌を直そうとする新太に、蛍は余計に悲しさが増した。

(それは、蛍のため?それとも…自分のため?)




そのとき、

「一年2組瀬戸新太くんは、至急職員室まで来てください。繰り返します…」


突然、校内放送で新太は呼び出される。



「何だろ?ーーーーごめん、蛍行ってくる…」

新太は、すぐに蛍に背を向けて走り出した。


「新太のばか」

蛍は独り言のように呟いて一人寂しく歩き出す。




「――――ああ、良かったわすぐに来てくれて」

職員室に行くと、先生が新太に言う。

隣には、父親の真太が来ていた。

「父さん…」

「新太、落ち着いて聞いてほしい」

真太が震える声で言う。


「え?」


「お祖父ちゃんが危篤だそうだ」

「―――え?」

(おじいちゃん…?)


「新太、今から一緒に病院まで行けるか?」

「分かった、でも俺、おじいちゃんって今まで会ったことも無かったよね?」


「詳しくは後で話す。とりあえず車に…ーーーー」

職員室を出て、足早に歩き出す真太に、慌てて後を追いながら、新太は携帯電話を取り出す。


「分かった、じゃあ美琴にも…」

「美琴には、言わなくて良い」

真太は、新太の手を止めるように携帯電話に手をかける。


「え、なんで?だってーーーー」

(美琴のおじいちゃんでもあるのに…)


「おじいちゃんは、新太(おまえ)にだけ、会いたいそうだ」

「俺だけ?」

新太は意味が分からず、とりあえず父親の後をついていく。





相馬直太(そうまなおた)、と書かれた病室に入ると、

祖父は、新太の方を目だけ動かして見る。


「――――お前が…真太の息子か…」

息を苦しそうにしながら、直太が嬉しそうに言う。


「はい、新太(あらた)です」

新太は、初めて会う祖父に緊張しながら答える。



「新太…」

名前を噛み締めるように、祖父は呟いた。


「最期に…新太に会えて良かった…」

そう言うと、直太はそっと…眠るように目を閉じた。



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