イベント(2)
『僕を…好きでいてくれるところが好きです』
――――その言葉は蛍を傷付けた。
(それは…つまり“蛍”じゃなくても…いいということ?)
反対に観客席で観ていた女子たちは、
入学してからすぐに蛍と付き合いだして、新太のことを諦めていたが、その言葉に希望を持った。
(もしかして…あのカップルって脆い?)
(私も…もしかしたらチャンスがある?)
女子たちは、熱い視線を新太に向けながらそんなことを考える。
ざわついた観客席に、司会は躊躇いながらも次へと進行する。
「つ、続きまして、エントリーNo.2番の菱川律季くん、どうぞ!」
マイクを渡された律季が、美琴に微笑みかけながら話す。
「俺は彼女の、明るくて素直で…飾らないところが好きです。」
自分に言われた訳でもないのに、観客席からキャーッと歓声が起こる。
美琴は照れながら微笑み返して言う。
「恥ずかしすぎる…ってば」
「だって、本当だから」
律季にさらっと言われて、美琴は更に顔が赤くなるのを感じた。
(なんで律季の言葉は、私をこんなに幸せにするんだろう)
「はぁ、素敵ですねー!」
うっとりしながら司会の先輩が言う。
「では…次に参りましょう!!では…エントリーNo.3番――――…」
――――結局この勝負は、最後に観客席からの拍手の大きさで決まった。
「では、優勝は、エントリーNo.2番、菱川律季くんと相馬美琴さんカップルに決定です!」
司会が興奮ぎみに言いながら、二人を前に立たせる。
「優勝賞品は、旅行券です!おめでとうございます!」
「え、そうなの?」
歓声と拍手の中、美琴が驚いて律季に言うと、
「そうなの」
隣で微笑みながら、律季が応える。
「律季、知ってたんだ?」
「ビラに書いてあったじゃん、見なかったの?」
(律季が出ようって言ったのは…この為だったの?)
美琴は驚きながら、賞品の旅行券を受け取った。
「あぁ、驚いた!」
「まさか、優勝するなんてね」
二人で手を繋ぎながら、校内を歩く。
「驚いたのは、律季にだよ。」
「え?」
美琴の言葉に、律季が立ち止まる。
「私のこと、そんな風に思ってたなんて」
「うん、知らなかった?」
律季に手をぎゅっと握られて、美琴は切なくなりながら笑う。
「ちょっとまだ…信じきれなくて」
(律季のことを、好きなのは本当。…だけど)
「え?」
律季が少し戸惑いながら聞き返す。
「前に言ったでしょ?私…いつか終わるから恋愛はしないんだって」
「あぁ…うん」
「“友達でいれば、別れもない…ずっと好きなままでいられる”って思ってた…」
美琴の言葉を、律季は黙って聞いていた。
「律季に好きだって言われたときも、最初は友達として好きだって思ってたから正直困った。でも逃げようとする私に何度も向き合ってくれたのは…律季が初めてだったの。」
美琴は律季の手を離して、律季の正面に向き直る。
「恋はしないって決めてたのに。気付いたら好きになってて」
(律季のことを信じきれないのに、それなのに…)
「気持ちばっかり大きくなってて…戸惑ってる」
(律季のことが、どうしようもなく好き)
「私…大丈夫なのかな…こんな幸せで良いのかな…」
(――――私は、愛されても良いの?)
そんな切なそうに笑う美琴を、律季はぎゅっと抱き締めた。
「良いんだよ?美琴は何も…不安になる必要ないから」
(律季―――…)
「俺は、ずっと美琴の傍にいる。終わりなんて、ないよ」
耳元で優しく囁かれると、美琴は涙が込み上げてきた。
『終わりなんて、ない』
(―――それは、本当?)




