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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第一章】
79/250

心苦しい朝

好きな人に隠し事をする。

それがこんなに苦しむことになるとは…。


美琴が翌朝食卓についてため息をつく。

「おはよ、どうしたの?」

母親の舞子が心配そうに顔を覗きこむ。


「おはよ…」

美琴がまたため息をつく。


「あ、私もう仕事行かなきゃ!お弁当ここにあるからね」

舞子が時計を見て慌てて出掛けていく。

「はーい、行ってらっしゃーい」

美琴は、座ったまま送り出す。


「おはよ、美琴」

「あぁ、おはよ」

新太が起きてきて、美琴が一瞬顔をあげる。


「なに、その顔…」

隣に座ってトーストを食べながら新太が聞く。


「いや…昨日…」

言いかけて美琴はやめた。

「いや、何でもない」

(律季の話すると、新太が不機嫌になるんだった…)


「何だよ、言いかけたら最後まで言ってよ…」

新太がじっと美琴を見つめる。

「だって…新太が不機嫌になるから」


「なに、“彼氏”?」

美琴が何も言っていないのに、そう聞く新太はすでに不機嫌そうだった。


「―――…律季にね、“新太の家知ってる?”って聞かれたの」

観念して、美琴が言う。

「え…」

「それで…知らないって嘘ついちゃって…」

美琴が切なそうに言うのを見て、新太は少し笑ってしまった。


「ちょっと?今笑った?」

「笑ってないよ、笑ってない」

笑いながら新太が言う。

(律季、やっぱ気になってたか…)



「―――それで凹んでるの?」

牛乳を飲み終えて、新太が言う。


「新太とのことを知られたくなかった…んだと思う」

「え?」

美琴から意外な言葉が帰ってきて、新太は驚く。


「なんか、言ったら気まずくなる気がして…言えなかった」

「………」

(律季に対しての気持ちしか考えてないのは、分かりきってることなのに…何を期待してたんだ…俺は)


「俺、先いくわ」

「あ、うん…」

新太は仕度をして、先に家を出ていった。


(でも、いつまでも隠していられない…)

美琴は、律季に話そうと思った。

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