爆弾発言
「おはよ、新太」
「………」
律季が声をかけても、新太は無反応で窓の外を眺めている。
「やっぱり俺のこと避けてるよなー」
言いながら律季は、新太の顔を覗きこむ。
「なぁ、なんで?」
「―――…」
「もしかして…美琴と関係ある?」
耳元で律季が言うと、新太は律季を睨む。
「―――…なんで…美琴が…」
「あれ?今日は“相馬さん”じゃないんだ?」
揚げ足をとるように、律季が挑発的に言う。
(あ…―――つい…)
呼び方を変え忘れて、新太は口を押さえる。
「蛍がいってた“イチャついてた”って話…、マジだったんだな」
律季が普通の声の大きさで言う。
「ちょっと…律季こっち、来て」
ガタッと席を立つと新太が教室を出ていく。
「――――なんで隠してたんだよ、中学時代、話したことないみたいなこといってたくせに…」
人気のない廊下で、律季が新太に尋ねる。
「それは…美琴が望んだことだから」
(本当は、美琴が俺のことを思ってしたこと…だった)
「ますます分かんないな…なに、お前ら付き合ってたの?」
「そんなんじゃない…美琴は」
言いかけて、新太は口を閉ざす。
(この先を…律季に知られたら…美琴はきっと俺を恨むんだ)
「じゃあ何?――――言えよ…お前が不貞腐れてる理由」
律季はそんな新太に詰め寄る。
(だけど、俺は…律季に美琴をとられるぐらいなら…)
「――――俺達は、一緒に住んでるんだ。」
(俺は…美琴に恨まれてもいい…)




