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幼馴染み
「なんで学祭の前に中間試験なんてやるんだろうなー」
斗亜がシャープペンをくるくると指先で回しながら言う。
「斗亜はやってもやらなくても成績変わらないでしょ?」
斗亜の部屋で勉強していた律季が、笑いながら言う。
「―――律季は?今回こそは首位奪還狙ってるのかよ」
ムッとした表情で、斗亜が律季に聞く。
「まぁ、美琴には敵わないだろーけどな」
斗亜が律季に挑発的に言う。
でも律季は、嬉しそうに微笑んで言った。
「別に…“学校で一位をとるのが俺の目的じゃないから”」
「なんだそれ」
斗亜が笑いながら言う。
「美琴が言ったんだ…俺に。」
思い出しながら、律季が言う。
「―――かっこいいよな…美琴は」
律季が人を本気で褒めているのを、斗亜は初めて見た。
斗亜は、もう笑えなかった。
(律季が変わったのは…美琴の影響だ…)
――――美琴の影響力は、すごいものだと思った。
(俺はもう…ついていけない…)
斗亜は独り取り残された気持ちで、シャープペンをくるくると指先で回す。
(美琴は好きだけど…俺じゃきっと、ダメなんだ…)




