サボり仲間
「十河先輩?」
美琴が屋上に行くといつもいる先輩、
十河すばるは、一つ上の二年一組。
「美琴、今日もサボるのか?」
美琴に声をかけられたすばるは、いつものように美琴に微笑みかける。
美琴が初めてサボった日、二人は屋上で出会ってから仲良くなった。
「先輩こそ、またサボりですか?」
「まぁね…」
すばるは、国語の教師、宮野先生に恋をしていた。
誰にも告げていない、自分の気持ち。
国語の授業だけサボるようになったのは、
宮野先生の姿を見るのが辛いからだった。
―――決して振り向いて貰えない相手に、恋をしてしまった自分。
(消えるものなら、消して…やり直したい)
そんなすばるの気持ちを和らげてくれたのは、
偶々(たまたま)出会った後輩、美琴だった。
彼女の明るい笑顔は、自分の気持ちを癒してくれた。
美琴にとっても、すばるにとっても、
お互いが、程よく他人で、話しやすい存在だった。
「ねぇ先輩?」
「ん?」
美琴は青空を眺めながら、隣にいるすばるに話し掛ける。
「私ね…恋愛したいんだけど…怖いんだ」
「―――どうして?」
いつも明るい美琴とは思えない発言に、すばるは思わず顔を見て、優しく尋ねる。
「だって…人の気持ちほど、あてにならないものはないでしょ?」
美琴の表情は、いつもと違って、
苦しくて、切ない気持ちが伝わってきた。
「………私、誰かを好きになるなんて…出来るのかな」
美琴の声は、小さくて…すばるには届かなかった。




