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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第一章】
67/250

恋愛相談所?

『ねーたん』

『あらた、おいで!おねーちゃんのところに――――』

私は4月生まれ、新太は3月生まれだったから、

幼稚園の頃から私が、何かと新太の面倒をみていた。


(新太は泣き虫で臆病だったから…私が守らないとって…)


お姉ちゃんなんだからーーーって私はいつも新太を側においていた。


『なんでもかんでも、一緒にしないでっ』

そうやってずっと私が新太を縛り付けていたくせに…

それなのに私はあんな言葉で新太を突き放した。


(あの時の新太の表情(かお)は…私はずっと忘れない)



高校では“姉弟”であることを隠す。

そう言ったのは、新太を自由にするためだった。


私が思うより早く、新太は友達も出来たし、彼女もすぐにできた。

(やっぱり私が…新太の自由を奪っていたんだと思った)



私の後ろをついて歩いていた新太は…、

いつの間にか私より背も高くなって…。


『律季みたいにキスでもしたら…俺のことも好きになってくれる?』

―――昨日の新太は…私の知らない(あらた)だった。



『俺の幸せを一番に思うなら…もうやめてよ』

――――私は新太の幸せを…考えてたのに。


『俺はずっと美琴の側にいたい…』

――――でも、新太がいつも側にいたのは、私が縛り付けていたからじゃなかった…?




「久しぶりだね、美琴」


美琴が授業をサボったのは、本当に久しぶりだった。

モデルの仕事で早退するようになって、さすがにサボるのは気が引けた。

なのに今日は…自然と屋上(ここ)に足が向かっていた。


美琴は、すばるの穏やかな笑顔を見て涙腺が弛んだ。

「うぅ…せんぱ~いっ」

久しぶりに会った美琴が泣き付くのを、すばるは驚きながらも支える。


「え、美琴?どしたの?」






「――――美琴が好きなのは、菱川律季だったとはね…」

話を聞いて、すばるは驚きを隠さずに言った。


「先輩、律季を知ってるの?」

隣に座りながら、美琴がすばるを見る。


「そりゃ彼は去年生徒会長だったしね…あのルックスだし、かなりモテていたから知らない上級生はこの学校にいないと思うよ?」


女遊びがひどい話も有名だったが、美琴にはあえて伝えないことにした。



「そう、なんだ…」

(律季は、モテるんだ…)

美琴は初めて知って、少しだけショックを受けた。


「で?菱川律季が好きなことで、なんで美琴がそんなに落ち込んでるの?」


「私…この間友達だと思ってた律季にキス…されたんです」


「え…いきなり?」

「はい…いきなり…」

すばるは突然の展開に、動揺した。


「それで…いつのまにか好きになってたんです…律季を」


「さすが…モテるやつはやることが違うな…」

ブツブツと呟くすばるに美琴が気付く。

「え?」


「いや、何でもない…っ!!」

すばるは、慌てて誤魔化す。



「―――私昨日…それを弟に指摘されたんです」


「弟がいたんだ?」

美琴の口から家族の話が出てきたのは初めてだった。


「はい、可愛い私の大切な弟です」

寂しそうに微笑んで、美琴が言った。


(可愛いってことは小学生なのかな…?)

すばるは美琴の弟と聞いて、勝手に美琴に似た美少年を想像した。



「その弟に…キスしたら自分も好きになってくれる?って迫られて…」



「弟くん、美琴が好きなんだね」

クスッと笑いながら、すばるは微笑ましく思って言った。


「私だって弟は好きですよ、でもそういうのおかしいですよね…」

美琴がうつ向いてため息をつく。

「私は弟にそういう感情は持っていないし、持つこともないから」


「まぁ…ねぇ」

(さすがにそれは、ないよな…)

すばるは心の中で苦笑する。


「でも弟のことはすごく好きなの、だから嫌われたくないんです…」

美琴は切実そうに、悩みを打ち明ける。


「あぁ、もう…どうしよう…顔合わせづらいよー」



「弟くんは、美琴が誰かにとられるのが嫌なのかな?」


「そう、みたいだった…」

昨日の新太を思い出すと、チクンと胸が痛んだ。


「ちゃんと弟くんのことも想ってるんだよって、伝えてみたら?」


「でもそれは…いつも伝えていましたから」

美琴がためらいもなく言うので、すばるの方が照れてしまう。

(すげぇな、伝えてたんだ…いつも…)

美琴が弟を溺愛していることが分かった。


「仲良いなー、美琴のところは。―――じゃあ、菱川律季の話はもうしないのが良いね」



「なるほど…」

美琴が神妙な顔つきで頷いた。



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