日曜の朝
『私も…新太が好きだよ?』
(美琴が言う“好き”は…俺の心には全く響かない)
――――満たされない理由は分かっている。
自分の欲している言葉なのに、自分の欲している気持ちは入っていないからだ。
昨日は色々ありすぎて、新太は一睡も出来なかった。
気づけば真っ暗にしていた部屋が明るくなってきているのがカーテン越しに分かる。
(仕度…しないとーーー)
新太はフラッとリビングに向かう。
「おはよう、新太」
早朝なのに舞子が起きていて挨拶する。
「おはよ…」
目をそらして、新太は言う。
(母さんが…実は父さんと再婚前に付き合っていたなんてーーー)
そんな大事なことを教えてもらえていなかったなんて、
新太は母親に不信感すら感じていた。
「いつも遅いのに、今日は早いのね」
舞子がからかうように言うと、新太はいらっとして水を飲むとまた部屋へと戻ろうとする。
「新太、待って…まだ怒ってるの?」
「別に」
(怒ってなんかいない…。母さんに怒るのは間違ってる。だって悪いのは…姉を好きになってしまった自分なんだからーーー…)
階段を上りながら、新太は向けるところのない怒りを抑え込む。
美琴が朝起きると、新太はすでに出掛けていて居なかった。
美琴は、モデルの仕事に向かう準備をする。
(新太…もう大丈夫なのかな?)
新太の心配をしながら、美琴は家を出る。
「行ってきまーす」
美琴が電車に乗るために最寄りの駅に向かうと、
そこにはかつての親友がいた。
「雫…」
美琴は無意識に名前を声に出していた。
雫は、そんな声に気がついて顔をあげ…目を見開く。
「美琴…」




