美琴
「相馬さん、これ…」
斗亜とお喋りをしていた美琴は、
珍しくクラスの女子から声をかけられる。
「あれ?私の教科書?ーーーありがとう」
美琴は、女子二人にお礼を言う。
「それ、隣のクラスの瀬戸くんが拾ってくれたみたいよ?」
「お礼なら瀬戸くんに言ったら?」
二人は無表情でそう言うと、行ってしまった。
「瀬戸くん…って新太のことか?」
隣で聞いていた斗亜が美琴に聞く。
「新太…」
美琴は斗亜の声が届いていなかったのか、
無意識のうちに声に出していた。
「美琴、新太と知り合いなの?」
斗亜がそんな様子の美琴に尋ねる。
「――――ううん、知らない」
美琴は教科書を見つめながら、答える。
「でも、編入生同士だよな?」
「編入生って、私と瀬戸くんだけじゃないじゃん」
「あぁ、まぁ…あと5人は居たかな?」
「私、自分以外の編入生知らないもん」
美琴は、いつもの笑顔で言うと席を立つ。
「美琴?どこ行くんだよ、授業始まるぞ?」
「斗亜、私サボる!!」
「はぁ?」
美琴の発言はいつも唐突で、
見た目はチャラい割に真面目な斗亜は面食らう。
「また後でね」
笑顔で手を振ると、美琴は教室から居なくなった。
美琴はいつだって自由で、その言動に斗亜は密かに憧れていた。
(いつも何考えてるのか分からなくて、目が離せなくて…もっと知りたくて…。美琴を手に入れたい)




