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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第一章】
59/250

帰る家

「蛍…ごめん、今日連絡しなくて」

新太は公園から家までの帰り道、蛍に電話した。

今日ずっと電源を切っていた新太は、蛍からのメールを大量に受信して驚いた。


『―――いいよ、もう…』

そう言う蛍の声はちっとも良さそうじゃなかった。



「―――明日どこか行こうか?蛍の行きたいとこ…」

ご機嫌をとるように、新太は言う。

『ほんと?やったぁ!どこにしようかなー!』

蛍の機嫌はなおったようだった。


電話を切ると、新太はため息をつく。

(蛍…ごめんな…)


自分の弱さを蛍で補っている自分は本当に卑怯だと思う。

―――新太は明日、蛍に正直な気持ちを話そうと思った。



「彼女、大丈夫だった?」

隣を歩く美琴が、電話を切った新太に言う。


「うん、多分…」

新太はスマホの画面を見つめたまま言う。



「それで、結局新太はなんで、あそこでいじけてたの?」

美琴が新太の顔を見上げて聞く。

「いじけてなんて…」


「じゃあ、何?」

美琴がじれったそうに顔を覗き込んでくる。


「俺は、美琴と一緒に居たかったから…あんな風に言われて、ショックで…」

新太はわざと、一年前の時の話をした。


「だからごめんってば。―――ってそうじゃなくて今日のことだよ」

美琴が新太の顔を見上げながら言う。


「言いたくない」

(美琴に知られたら、俺のこんな想いは完全にヒかれる…)


美琴は、いつだって新太を“弟”として見ている。

それが結局“正解”で…、

“姉”を異性として見ている自分の気持ちは“不正解”だ。



だとしたら、この想いは…絶対に知られてはいけない。





「ただいまー」

「おかえり…あら珍しい二人が一緒に帰ってくるなんて」

美琴の声に、

舞子がリビングから顔を出して驚いたように言う。


新太は母親を睨むようにして二階へと階段を上がっていった。


「新太、まだ怒ってるのかしら…」

昼間の話を聞かれたとも知らずに、舞子は呟く。


「何、新太はお母さんと喧嘩したの?」

美琴が、そんな舞子と新太の様子に気付いて納得したように言う。


「ちょっと…ね」

舞子はそれ以上なにも言わずに、キッチンへと入っていく。

「美琴、手を洗ったら夕御飯の仕度手伝ってー」

「はーい」


美琴はいつものように返事をして舞子のいるキッチンへと向かう。


リビングでテレビを見ていた真太は、そんな美琴の姿を目で追っていた――――。


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