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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第一章】
57/250

回想

(新太…?)

あてもなく走りながら、美琴はちょうど一年前のことを思い出していた。





「新太のこと、どう思ってるの?」


クラスの女子たちになぜか避けられ始め、

仲良しだと思っていた木下(きのした)(しずく)にまで避けられるようになって、美琴は雫にその理由を尋ねた。

すると、雫にそう聞き返された。


「え、新太は私の弟だよ…」

セーラー服姿の美琴は当然(いつも)の答えを口にする。


「―――新太のこと弟だと思うなら、もう一緒にいるのやめたら?」

雫は、どこか寂しそうにそう言った。


「…なにそれ、どうして?」

いつも一緒、それが当たり前だった美琴は、

雫が言っている意味がわからずに聞き返す。


「皆、迷惑してるのよ、まだ分からないの?」

雫が黙ったままいると、

雫の周りにいた同じクラスの女子たちが代わりに言う。



「え…」


美琴(あんた)がいると、邪魔なのよ」

「お姉ちゃんぶってるの、逆にウザいから!」

「美琴が誰とも付き合わないのは、本当は弟が好きだからなんでしょ?」

「うわー、キモー」

「てか、誰にでも良い顔して告白されて…いい気なもんよね」

「みんな新太のこと好きなのに、美琴のせいで近付けないのよ、分かんないの?」


―――女子たちが、言葉の暴力で美琴を傷付ける。





「美琴?帰ろう?」

新太が何も知らずに、いつも通り美琴を迎えに来て、

女子たちは一斉に教室から居なくなった。

――――雫も、一緒に……。


「うん…」

美琴は、新太に気付かれないように微笑んで言う。



「新太…私ね、高校は私立の南青高校に行くことにした」

帰り道、隣を歩きながら美琴が言う。


「は?なんで?こないだまで一緒に近くのA高に行くって言ってたじゃん」

美琴が突然進路変更をしたことに、新太は驚きながらも不満げに言う。


「新太はA高校に行きなよ、私は南青高校に行くからさ」

「なんでだよ、美琴が南青高に行くなら俺も…」

新太は美琴にいつもどおり合わせようとする。


『新太のこと、弟だと思うなら…もう一緒にいるのやめたら?』

『キモー』

―――雫や、クラスの女子たちに言われた言葉が、美琴を襲う。


「なんでもかんでも、一緒にしないでっ」

美琴は、叫ぶように言い放った。


「え…」

新太は、傷ついたような表情で顔をこわばらせた。


(あの日…私は一度だけ…弟を突き放したんだ。

大事な、弟を…)







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