変化する距離、変わらない二人
『友達として、律季のことは好きだから』
(誰にでも“好き”とか言うなよ…バカ…)
「―――相馬さん、モデルになったらしいね」
無表情で蛍が美琴の載っている雑誌『May』を見ながら言う。
「へぇ、そうなんだ…?」
学校帰りに寄った蛍の部屋で、
美琴のことを考えていた新太はドキッとしながら答える。
「確かに美人でスタイル良いもんね」
蛍が不機嫌そうに言う。
「そうだね…」
(―――もう俺の手の届くことのない…すごく遠くの存在みたいだ…)
新太は、雑誌の中の美琴を見つめながらため息をつく。
――――そんな上の空な新太を、蛍は見つめていた。
(そこは、ウソでも否定して欲しかったのに…新太のバカ)
「新太、今日は遅くなっても大丈夫なんでしょ?」
蛍は新太の顔にそっと両手を伸ばす。
(今日こそ、新太と…)
「あ、今日はごめん、そろそろ帰らないと…」
新太は、そんな蛍の雰囲気に気づいたのか、顔をそらしながら言う。
(今日は珍しく、美琴が仕事しない日だから…)
「新太、変わるって言ってくれたのに…何にも変わってないじゃない…」
蛍は拗ねたように言う。
新太はハッとして…そんな蛍にキスをする。
「ごめんな蛍、本当に今日は…」
キスをしたあと、新太が至近距離で言う。
「じゃあ約束して?」
新太の言い訳を遮るように、蛍が真顔で言う。
「明日は、ずっと一緒にいてくれるって」




