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近付く関係
「あ、パパ!お帰り」
玄関を開けると、美琴がちょうど階段を降りてきた。
「ただいま、美琴」
真太は微笑んで言う。
「今日は珍しく早いのね」
キッチンから嬉しそうに舞子が声をかける。
―――定時で接待もなく、真太は久しぶりに夕方帰宅した。
「そうそう!美琴がね、正式にモデルデビューするんですって」
舞子が、もらってきた名刺を見せながら真太に説明する。
「へぇ、すごいな…」
真太は、そう言いながら何気なくその名刺に目を落とす。
(え…嘘だろ…)
「―――…それでね、今日お母さんと編集長と一緒に事務所の社長さんにもご挨拶してね」
美琴と舞子が、真太にはしゃぎながら説明する。
しかし、真太の耳には…全く入ってこなかった。
名刺を凝視したまま、動けず…思考も停止していた。
(こんな、偶然が…)
「―――ねぇ、パパも応援してくれるよね?」
美琴が甘えたような声で、真太の顔を覗き込む。
「ちょっと…考えさせてくれ…」
真太は、フラッと自室に歩いていった。
「え、ちょっと…パパ?」
美琴は、父親の顔色が悪いことに気が付いた。
「変なパパ…」
美琴は、不思議そうに父親の背中を見ながら呟く。




