モデルとしての撮影
「お疲れ様でしたー」
可愛い衣装のワンピースを纏った美琴は、撮影スタジオから周りのスタッフに挨拶しながら出る。
「ありがとね!考え直してくれて助かったわ」
目の前から、先日声をかけてきた女性、神埼編集長がにこやかに美琴に話しかける。
「あなたが載っていたページ、かなりの反響があってね。可愛いってファンレターまでたくさん届いたのよ?」
「本当ですか?ありがとうございます」
「ところで“MIKOTO”ちゃん…、本名は相馬美琴ちゃんって言うのね」
美緒が書類を見ながら言う。
「あ、はい。すみません本名とかはちょっと…」
美琴が目を伏せる。
「気にしないで、大丈夫よ。ーーーでも全然違う名前とかじゃなくて良いの?」
「はい、分かる人にだけ…分かれば良いんです」
美琴が寂しく微笑んで、言う。
「?そう…。ところで正式にうちのモデルになってもらうんだし、ご両親にも一度ご挨拶に伺いたいのだけど、いつが都合よろしいかしら?」
美琴の言葉はどこか意味深だったが、美緒は敢えて触れずに言う。
「あ、母なら大抵家に居ますよ!一応今電話してみますね」
美琴はスマホを取り出して自宅へ電話をかけた。
『もしもし?美琴?』
3コール目で、舞子が出た。
「あ、お母さん?私がこないだ話したバイトの話なんだけどーーーーー」
『あ、はいはい。モデルでしょ?』
「うん、それで編集長さんがご挨拶したいって、来週って都合どう?」
『それなら私が今度、そちらの事務所に出向くわよ』
「あ、じゃあよろしくねー」
電話を切ると、
「大丈夫でした、来週母が事務所まで来たいって」
美琴が言うと、編集長は微笑む。
「そう?助かるわ。所属するモデル事務所の社長さんにもお声がけしておくわね!」
「あ、はい!お願いします」
「じゃあ、次号の『May』、楽しみにしててね」
「はい」
美琴は微笑んで答えた。




