新太に聞いてみる
「なぁ、新太」
昼休み、蛍と弁当を食べに行こうとしていた所を律季に捕まる。
「ん?」
弁当の入った袋を片手で持ち、
もう片方の手で紙パックのイチゴミルクを飲みながら律季の方を向く。
「美琴って、中学ではどんな子だったの?」
「ゴフッ」
唐突な質問に、紙パックに空気を入れてしまいイチゴミルクが飛び散る。
「うわ、汚ねぇな…っ」
律季が手にかかったらしく、嫌そうに拭う。
「美…相馬さんの中学時代?―――知らねぇよ、そんなこと」
自分の顔回りを拭きながら、新太は律季に答える。
「なぁ、じゃあ卒アルとか見せてよ!」
律季は、さらに要求してくる。
「はぁ?やだよ重いし」
内心ハラハラしながら、新太は答える。
(中学では“瀬戸”だったからな…、絶対見せれねーし!)
「じゃ今日家に行っても良い?」
どうしても見たいらしく、律季にしつこく頼まれる。
「ダメ、放課後は蛍と約束あるし」
嘘では無かったが、何となく罪悪感を感じながら断る。
「なんだよ新太、全然協力してくれねーのな」
「相馬さんの過去なんて知ってどーするんだよ」
「美琴のこと、もっと知りたいと思っただけだよ、普通だろ?」
律季は、真剣な表情で新太に言う。
「なんであんな頑なに恋愛しないようにすんのか…」
「さぁ…俺は同じクラスになったことないからな…。まぁモテてたけど、誰とも付き合ってなかったらしいよ」
新太は、あくまで噂で聞いた風に、語尾を付ける。
「ってことは、当時他に好きな人居たとか?」
律季が推測しようとする。
「知らねぇよ、だから…」
苛立ちながら、新太は答える。
なぜなら、新太にも本当にその理由は分からなかったから…。
美琴は、中学でも何度か告白をされていたが、断り続けていた。
小学校までは女友達も多かったし人気者だったのに、
中学に入ってから女子たちは、だんだん美琴を避けるようになった。
モテるくせに、毎回フッているのが“調子にのっている”ことになるからだと、クラスのやつが言っているのを聞いたことはある。
そんな理由で美琴は女子たちから孤立した。
高校を地元ではなく、わざわざ遠い私立に編入したのも、中学の女子達と同じ所に進学したくなかったからだろう。
新太はそんな美琴が心配で、同じ高校を選択した。
美琴は、高校に入ると…最初から男友達しか作らなかった。
新太に分かっているのは…そんな事だけだった。




