美琴と斗亜
「おい、美琴!!」
美琴が教室に入ると、待ち構えていたように斗亜に声をかけられる。
昨日のことを、怒っている様子がすぐに見てとれた。
「斗亜…昨日はごめんね」
美琴は、心から謝る。
「お前さ、俺のこと好きじゃなかったわけ?」
斗亜は、謝罪ではなく昨日の返事を欲していた。
単純に、まだ信じられなかった。
朝から帰りまでずっと一緒にいて、
お互いに居心地が良いと感じていたはずなのに、
昨日初めて部屋に来た美琴に告白したら、
美琴の反応は…まさかの拒絶だった。
「好きだよ!斗亜のこと好きだけど…。それは“友達”としてっていうか…」
「はぁ?」
納得いかない、と斗亜が声を荒げる。
クラスの注目を浴びているのに気付いた美琴は、
とりあえず斗亜の腕を引いて教室を出る。
「斗亜…」
美琴が斗亜を見上げる。
身長165㎝で、女子の中でも背の高い美琴が、
見上げて話をするのは、180㎝ある斗亜と新太ぐらいだ。
「友達でいてよ…、ダメ?」
(斗亜が居なくなったら…友達居なくなる…!)
美琴は、必死でお願いする。
斗亜は、
潤んだ瞳で自分にお願いする美琴を見つめて…言葉に困る。
(美琴…天然過ぎる…)
自分と両想いだと信じていた女の子に、
「お願いだから友達でいてくれ」と頼み込まれるなんて、
斗亜は、初めてだった。
「分かった…」
断わる事も出来ず、斗亜は降参した。
(惚れた弱味だ…よな)
「本当?斗亜…大好きー」
無邪気に抱き付いてくる美琴に、手を出せずに理性を保つ。
(なんだ…これーーーー?拷問?)
惚れた女の子が、ただ者ではないことに気付くのが遅かったことを…斗亜は後悔した。




