美琴のトラウマ
「美琴、待って…っ」
休み時間の度に、律季に追いかけられる。
「もう、追いかけて来ないでよっ」
追い付かれないように全力で走りながら、美琴は言う。
「話、聞いて…っ」
律季は足が速く、美琴も決して遅くない筈なのに距離が縮まる。
「聞かない、律季の嘘つきっ」
美琴が言ったことばに反応した律季は、本気で走り込み、あっという間に追い付いて、美琴の前に立つ。
律季は壁に手をついて通せんぼすると真剣な眼差しで美琴を見つめる。
「―――嘘なんてついてないよ…」
「え…」
美琴は、律季の真剣な表情に、思わず聞き返す。
「俺は一度も、友達として“好き”だなんて言った覚えないけど?」
「律季…」
美琴は、自分の“好き”と律季の“好き”が違っていたと今まで全く気付かなかったことにばつが悪そうに黙り込む。
「美琴のこと、本気で好きだから。」
美琴は、律季の告白を…申し訳ない気持ちで聞いていた。
「美琴は、恋愛したくないの?」
律季は、そんな表情の美琴に苦笑いで問い掛ける。
「だって…いつか終わるからーーー」
うつ向いたまま、美琴は呟く。
「終わるって…?」
律季には、あまりに抽象的過ぎて理解できなかった。
「“愛”なんて、一時のものだから…」
「なんでそんなこと言うの?」
美琴が指す“愛”は、過去に何かあったことなのだろうか。
律季は、美琴の過去を全く知らないことに初めて気付いた。
「友達としてなら、ずっと一緒にいられたのに…」
しかし、美琴は律季の問いには答えずにそう呟くと、
教室へと戻っていった。




