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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第一章】
38/250

騒ぎ

「ちょっと!これ見た?相馬さんだよね?」


夏休み明けに登校するとクラス女子たちが騒いでいた。

新太は、気になったが近づくことも出来ず、自分の席につく。


「え、なになに?」

律季が自然に女子たちの輪の中に入って聞く。


「ほら、ここ!」

女子が律季にファッション雑誌を見せると、美琴が写っていた。


“素人さんの一週間コーディネート”というテーマで1ページを、美琴が独占している。


―――そこに写っていた美琴は見たものを惹き付けるような美しさで、明るく楽しそうに笑っていた。


「悔しいけど…可愛いよね…」

一人が言うと、皆も渋々頷く。

律季は、雑誌の中の美琴に見惚れていた。


そんな律季を、自分の席からそっと眺める。

(律季(あいつ)…本気なんだな…)





隣の三組でも、女子たちが当の本人である美琴を取り囲んでいた。

「相馬さん、これどういうこと?」

「これって、相馬さんだよね?」


雑誌を見せられて、美琴が照れたように言う。

「あ、それ…なんかバイトしないかって言われてやっただけでーー―」


「えー、それってスカウト?すごいね!!」


「ううん、もうやるつもりないよ…」

女子たちに話し掛けられるのが慣れていないからか、美琴は戸惑いながら言う。



「おはよ、美琴!…なんの騒ぎ?」

斗亜が教室に入ってくると、自然に声をかけてきた。


「斗亜、これ見てよ!相馬さん、載ってるんだから!」

クラスの女子たちが興奮しながら、雑誌を斗亜に見せる。


「うわ、マジか…すごいじゃん」

「別に…」

斗亜は純粋に驚いて言うと、自分の方を向かないままの美琴が席を立ちながら言う。


「ちょっと待って美琴…」

教室を出て、廊下を走っていく美琴を斗亜は引き止める。



「―――何?」

斗亜の声に美琴は立ち止まり、振り返らずに強い口調で言う。


「なんで俺のこと避けんだよ?」


「―――だって…」

美琴の声は曇っていた。


―――斗亜は、何となく気づいていた。

あの時…自分の家で一度キスしようとした時のことが原因で

、美琴は自分も律季と同じように避けているのだと。


「俺、ちゃんと“友達”でいるって言ったじゃん」

言いながら、斗亜は違和感を感じていた。

(俺は、美琴が好きで…手に入れたかった筈なのに…)


「―――でも…」

美琴は、斗亜の方を振り返る…うつ向いたまま。


「律季と一緒にするなよ…」

(本当は、俺も律季と同じ…でもそんな気持(こと)、今の美琴に知られちゃ駄目だ…)



「―――…」

美琴は、ゆっくりと斗亜を見上げる。


「美琴のそんな表情(かお)、見たくねーんだ…」

(俺は…明るい美琴が好きだから…)

斗亜は、まっすぐに美琴を見つめ返す。

その想いは、本当だった。



「俺は、美琴の友達でいるから。絶対に」

(そばに居られるのなら、友達(それ)で良いんだ…今はーーー)


「斗亜…っ」

美琴は、斗亜に抱きつく。

「ごめん…ごめんね?斗亜は友達なのに…」


戸惑いながら、斗亜はそっと美琴の背中に手を添える。


「大好きだよ、斗亜…」

美琴のまっすぐ疑わない言葉に、罪悪感を感じながら…。


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