騒ぎ
「ちょっと!これ見た?相馬さんだよね?」
夏休み明けに登校するとクラス女子たちが騒いでいた。
新太は、気になったが近づくことも出来ず、自分の席につく。
「え、なになに?」
律季が自然に女子たちの輪の中に入って聞く。
「ほら、ここ!」
女子が律季にファッション雑誌を見せると、美琴が写っていた。
“素人さんの一週間コーディネート”というテーマで1ページを、美琴が独占している。
―――そこに写っていた美琴は見たものを惹き付けるような美しさで、明るく楽しそうに笑っていた。
「悔しいけど…可愛いよね…」
一人が言うと、皆も渋々頷く。
律季は、雑誌の中の美琴に見惚れていた。
そんな律季を、自分の席からそっと眺める。
(律季…本気なんだな…)
隣の三組でも、女子たちが当の本人である美琴を取り囲んでいた。
「相馬さん、これどういうこと?」
「これって、相馬さんだよね?」
雑誌を見せられて、美琴が照れたように言う。
「あ、それ…なんかバイトしないかって言われてやっただけでーー―」
「えー、それってスカウト?すごいね!!」
「ううん、もうやるつもりないよ…」
女子たちに話し掛けられるのが慣れていないからか、美琴は戸惑いながら言う。
「おはよ、美琴!…なんの騒ぎ?」
斗亜が教室に入ってくると、自然に声をかけてきた。
「斗亜、これ見てよ!相馬さん、載ってるんだから!」
クラスの女子たちが興奮しながら、雑誌を斗亜に見せる。
「うわ、マジか…すごいじゃん」
「別に…」
斗亜は純粋に驚いて言うと、自分の方を向かないままの美琴が席を立ちながら言う。
「ちょっと待って美琴…」
教室を出て、廊下を走っていく美琴を斗亜は引き止める。
「―――何?」
斗亜の声に美琴は立ち止まり、振り返らずに強い口調で言う。
「なんで俺のこと避けんだよ?」
「―――だって…」
美琴の声は曇っていた。
―――斗亜は、何となく気づいていた。
あの時…自分の家で一度キスしようとした時のことが原因で
、美琴は自分も律季と同じように避けているのだと。
「俺、ちゃんと“友達”でいるって言ったじゃん」
言いながら、斗亜は違和感を感じていた。
(俺は、美琴が好きで…手に入れたかった筈なのに…)
「―――でも…」
美琴は、斗亜の方を振り返る…うつ向いたまま。
「律季と一緒にするなよ…」
(本当は、俺も律季と同じ…でもそんな気持、今の美琴に知られちゃ駄目だ…)
「―――…」
美琴は、ゆっくりと斗亜を見上げる。
「美琴のそんな表情、見たくねーんだ…」
(俺は…明るい美琴が好きだから…)
斗亜は、まっすぐに美琴を見つめ返す。
その想いは、本当だった。
「俺は、美琴の友達でいるから。絶対に」
(そばに居られるのなら、友達で良いんだ…今はーーー)
「斗亜…っ」
美琴は、斗亜に抱きつく。
「ごめん…ごめんね?斗亜は友達なのに…」
戸惑いながら、斗亜はそっと美琴の背中に手を添える。
「大好きだよ、斗亜…」
美琴のまっすぐ疑わない言葉に、罪悪感を感じながら…。




