解散
「なんで新太が行くの?」
不機嫌な蛍が、新太に怒りをぶつける。
「いや…頼まれたからーーー」
「だったら蛍も行く」
「え…」
新太が言葉に困っていると、蛍がにらむ。
「なんか問題でもある?」
「いや…」
新太は微笑んでみせるが、内心動揺しまくりだった。
(問題大有りだろ…)
家について来られたら、家の表札でバレる…。
そこが、ずっと教えていなかった“瀬戸家”であることも…。
言い訳も思い付かず内心しどろもどろになっているところに、蛍のスマホが鳴る。
「え…うん…分かった…」
電話に出た蛍が、険しい表情になって言う。
「新太、私帰らなくちゃいけなくなった…」
蛍が残念そうに言う。
「そか、じゃあ送ってくよ…」
新太は微笑んで言う。
「ん…」
新太の言葉に、蛍が嬉しそうに頷く。
「―――じゃあ俺たちは帰るね」
美琴の荷物を持った新太と蛍は、別荘から出て行く。
「なんで新太が…」
残った斗亜は、二人を見送りながら律季に嘆く。
「仕方ねーだろ、俺にも斗亜にも会いたくねーって言ってたらしいからな」
律季が無表情で言う。
「お前…何したよ?」
身に覚えのない斗亜は、律季に尋ねる。
「キスした」
新太たちの背中を見つめながら、律季は告げる。
「お前、ふざけんな…っ」
それを聞いた斗亜の怒りは、全力で律季に向けられる。
斗亜は思わず律季の胸ぐらを掴んだ。
「いや、ふざけてないから」
しかし、真面目なトーンで言う律季の表情を見たら、徐々に手の力が抜けていった。
「律季…」
(いつも澄ましてるこいつが、こんな表情するなんて…)
「俺、本気だからーーーだからかわかんねーけど…なんかめっちゃ凹んでる…こんな気持ちになったの初めてだわ…」
律季は顔を歪めながらしゃがみこむ。
「俺だって…マジだかんな…」
そんな律季を、見下ろしながら斗亜は言う。
「分かってる、そんなこと…」
律季は顔を上げて、斗亜に苦笑した。




