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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第一章】
35/250

先輩の存在

「美琴…」

「あれ、新太…どうしたの?」

砂浜を走っていると、使われなくなって置かれていた船の陰に隠れるように座っていた美琴を見つけた。


「どうしたのじゃねーし、みんな心配して…斗亜も探して」

斗亜に電話しようとした新太の手を、立ち上がって美琴が止める。

「待って、新太…」


「美琴…?」

新太は美琴の傷付いた表情(かお)を見て、心臓がバクバクとうるさく鳴り出すのを感じながらも、言った。

「律季に…キスされたの?」


すると美琴は、両手で顔を覆う。


「なんで…」

(新太が知ってるの…)


そんな美琴を見ながら新太は血の気が引いていくのを感じた。

(マジか…)



「ごめん…」

「なんで新太が謝るの…?」


「だって美琴…」

(泣き顔見られるの、嫌がるから――――)


ショックを受けたのは新太も同じだったが、美琴のことを想うと、泣き顔を見てしまった罪悪感も感じていた。


「私…先に帰る…。新太、スマホ貸して」

涙を拭うと、深呼吸したあとに美琴が言う。


「え、どうする気…?」

言いながら、新太は言われた通り携帯電話を差し出す。

すると美琴は、慣れた手つきで番号を押す。


「もしもし、私美琴。先輩、今からって予定あります?―――うん…」



暫くして通話を終えると、美琴は新太に携帯電話を返す。

「ん、ありがと」


「ねぇ、今の誰だよ?」

新太が嫉妬しながら尋ねる。

(先輩…?迎えに来てくれる間柄?―――そんなやつ、俺は知らない…)


「暫くしたら迎えに来るから、荷物はお願いね…」

それには答えず、美琴はまたその場に座り込む。


「ちょっと美琴…」

新太の言葉を遮るように、美琴が言う。

「…別荘に戻らないと、“彼女”が心配するよ?」





美琴に言われ、別荘へと戻る道のりをトボトボ歩いていると、

斗亜が走ってくるのが見えた。


「新太、美琴いたか?」

斗亜は汗だくになりながら尋ねる。


「あ…」

新太は躊躇ったが、美琴のことを本当に心配している斗亜には話すことにした。


「み…相馬さん…迎え来るからって先に帰った」



「はぁ?誰だよ迎えって…」

斗亜が怒ったように言う。


「分からない。先輩とかって言ってたけど…ーーー」


「あ、あいつか…」

斗亜は、“先輩”のことを知っているようだった。



(なんで斗亜は知ってるのに…俺は知らないんだ…)


新太はまたショックを受ける。


(美琴のことを誰より分かっているのは、俺の筈なのに…)








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