ベッド争奪戦
「あー…楽しかったぁー」
噛み締めるように美琴が、伸びをしながら部屋へと戻る。
「俺も、今年は特別楽しかった」
律季も上機嫌で言う。
「あ、ベッド二つしかないよね?どうする?」
美琴が初めて気がついて、二人に尋ねる。
「俺、床で寝るから、美琴使って良いよ?」
斗亜が紳士ぶって答える。
「あ、悪いな斗亜!じゃあ美琴、俺と一緒に寝ようかーーー」
美琴の肩に手を置くと、律季が美琴に微笑んで誘う。
「おい待てコラ、そしたら俺床で寝る意味ねーだろ」
斗亜が律季に全力で突っ込むと、美琴の肩から律季の手を退ける。
「あ、気付いた?」
斗亜のリアクションを鼻で笑いつつ、律季が言う。
「あ、でもそれだと斗亜が可哀想…」
一人真面目に考えていた美琴は、
「斗亜でかいから、私と律季でこっちのベッド使おうか?」
「「えっ??」」
斗亜はもちろん、さすがの律季も驚いて声をあげる。
「ちょっと美琴…お前何言ってんだよ」
斗亜が動揺を隠せず、美琴に迫る。
「そんなの、危険に決まってるだろ…!?」
「私は大丈夫だよ、寝相も悪くないし…――」
美琴が無邪気な笑顔で言う。
「いや、そういう意味じゃなくてさーーー」
斗亜があきれながらも説得しようとする。
「俺も“寝相”悪くないし、安心しろよ斗亜」
律季は、勝ち誇ったような表情で斗亜に微笑む。
(律季の野郎…っ)
斗亜は律季の笑顔を心から憎たらしく思った。
「でもさ、その前にお菓子パーティしよーよ!」
ポテトチップスの袋を開けながら、美琴が明るく言う。
「あ、まだ寝ないんだ…」
斗亜は少しだけホッとし、律季は心の中で舌打ちした。
「そう言えばさ、二人はずっと幼馴染みなんだよね?」
美琴がお菓子を食べながら斗亜と律季に問い掛ける。
「そうだなー、俺の妹がちっさい頃から律季のこと好きでさー…」
斗亜が話し出す。
「へぇ、斗亜は妹がいるんだ?」
美琴がベッドに寝転がりながら言う。
「おう!中等部にいるから今度紹介するよ」
「ふふ…楽しみー」
「―――そう言えばさ、どうして美琴は私立の高校に入ったの?」
律季から突然聞かれて、美琴の顔から笑みが消えた。
「スポーツ推薦でもないし…。地元の高校にだって、美琴なら入れただろ?」
「―――地元の高校には、行きたくなくて…。」
苦笑いを浮かべて、美琴が言う。
「それに、進学校でしょ?なるべく偏差値の高い高校に行きたかったから…」
まるで今取って付けたような理由に、美琴は内心ドキドキしていた。
(って、不自然だよねー…)
「そっかー、まぁこの辺りでは一番の偏差値だしな」
斗亜は納得したのか、頷いて言う。
「お前の偏差値は中等部以下だけどなー」
律季が斗亜をからかう。
「んだとー!?」
そんな二人の様子に、美琴はそっと息をつく。
(良かった…これ以上は聞かれないよね…)
「あ、今度さ…」
暫く律季と昔の話をして盛り上がっていた斗亜が、
改まって美琴に話し掛けようとすると、
ベッドに寝転がっていた美琴は目を閉じてスヤスヤと寝息を立てていた。
「え…美琴…寝ちゃったの?」
うつ伏せになったまま、幸せそうに寝入っている美琴を見つめて二人はため息をつく。
「こんな寝方されたら、俺寝れないじゃん…」
ベッドのど真ん中で寝られた律季は、苦笑する。
結局じゃんけんで勝った律季が斗亜からベッドを奪い、
斗亜は床で寝ることになった。
「夜更かし…するんじゃなかったのかよ…」
斗亜な煎餅布団に横になり、ボヤくと、
「美琴には、敵わないな…マジで」
ベッドの上から、律季の呟く声が聞こえてきた。




