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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第一章】
29/250

花火

夜になると辺りが静まり返っている分、波の音がよく聞こえてくる。


「やっぱり夏は、花火でしょー」

「だねっ!!」

律季が別荘から持ってきた、ろうそくと手持ち花火を見せると、夕食後全員で花火大会をすることになった。



美琴は、嬉しそうに律季から手持ち花火をもらう。


そんな姿を…斗亜は見つめていた。

(美琴がいつも通りになって良かった…でも)


だけど自分の心のなかに、腑に落ちない“何か”を感じていた。





「あれ、風強いからろうそくに火つかないなー」

律季がライターで着けようとしても、すぐに風で消されてしまう。


「ダメ…?」

隣にしゃがみこんだ美琴が両手でろうそくを囲い、風を防ごうとする。

「あ、ありがと」

律季が火を着けようとしながら美琴にお礼を言う。

「うん」

二人の顔が息遣いも感じるほど近づくーーー。


律季は心臓が高鳴っていることに気が付いた。

(なんで俺、こんなドキドキしてんだよ…)


動揺して、うまくライターを使えない。



「じゃあさ、直接法でいきますか!」

美琴が言うと、律季に手持ち花火を差し出す。


「律季、花火(これ)に火を着けて!皆で絶やさないようにやろ!」


やがて美琴の手持ち花火に火が着き、

それを律季と斗亜の持っている花火に近付ける。


二人の花火にも火が着き、キレイな光を放つ。


「花火って…綺麗だよね」

美琴の声に気づき、新太は少し離れた所から振り返る。


美琴の持っていた花火は、消えてしまっていた。


「ほら、新太!俺のももうすぐ消えるから!!」

「あ、ごめん…」

斗亜が花火を近付けてきて、新太は自分の手元に視線を戻す。


『花火って…綺麗だよね』

美琴の言葉が頭から離れない。


切ない表情(かお)をして、消えていく花火を見つめる美琴は…、大人びて見えた。


(美琴…どうしたんだろう…)


新太は心配になってもう一度チラッと美琴を振り返る。


「あははっ、斗亜危ないって!!振り回さないでよっ」

「ほら、律季!」

「危ねぇな、斗亜(おまえ)覚えてろよー」


三人が楽しそうに花火をしている姿を見て、

新太はすぐに手元の花火に視線を戻した。

(いつもの美琴だな…)


消えた花火をバケツに入れると、プシュッと小さく音を立てて花火が完全に消える。


「新太、はい」

蛍が新しい花火を二本、新太に手渡す。


「ありがと」

「楽しいね…花火」

「うん」

蛍と新太は、三人の騒ぐ声を聞きながら静かに話す。


「新太とこうして思い出作れて、蛍幸せだよ」

蛍が石段に座りながら、花火の光を見つめて言う。


「蛍…」

蛍の気持ちはいつだって自分に100%向けられている。

嬉しいはずなのに…新太は少しだけ、心苦しさも感じていた。


「俺も…幸せだよ」

新太も花火の光を見つめて言うと、すぐに光は消えた…。


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