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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第一章】
27/250

美琴と蛍

「美琴のビキニ、ヤバすぎだろ…」

「俺的には、あのポニーテールが良いっ!…可愛すぎ」

「斗亜も、律季も、見すぎ…」

新太も、斗亜と律季にそう言いながらもチラッと美琴を見る。


男たち三人は、浜辺にバーベキューセットを準備しながら、視線は美琴に釘付けになっていた。


美琴は男たちとは少し離れた水道のある場所で、蛍と一緒にバーベキューに使う野菜の準備をしていた。


蛍は、幼児体型なのを気にしてか、水着の上にキャミソールワンピースを着ていたが、美琴は白地に花柄のバンドゥビキニを惜しげもなく見せている。


夏の日差しが、美琴を一際輝かせていた。





「美琴ちゃん、料理も出来るのね…」

男たちの視線に気付いた蛍は、軽やかに野菜を切る美琴にますます嫉妬しながら話しかける。


「ん?まぁ、お母さんも働いててたまに夕御飯作ってるからねー」

包丁を持つ手を止めることなく、美琴が答える。


「へぇ。―――で、美琴ちゃんは斗亜と律季のどっちが本命なわけ?」

美琴が切った野菜を皿に並べながら、蛍が尋ねる。



「…え?なにそれ」

美琴の手が止まり、トントンという包丁のリズムが()む。


「ウソでしょ?まさか…どっちでもないの?」

蛍は愕然として言う。

「噂通りの男好きなのね…」


「私はただ、友達として仲良くしたいだけだよ。女友達より男友達の方が付き合いやすいから。ただそれだけ」

美琴は蛍をまっすぐ見つめて言い返す。

「それが“男好き”だって言うなら、それでも構わないけど」


(この子とは、絶対仲良くなれないわ…)

美琴と蛍は、同時に同じことを思っていた。




「火、つけたよ美琴!」

「リョーカイ」

ちょうど斗亜が声をかけに来て、美琴は野菜を持って蛍から離れる。



「蛍?どうした?」

美琴をじっと見つめる蛍の表情が険しくて、

斗亜と一緒に声をかけに来た新太が心配そうに顔を覗きこむ。


「私…ああいう子本当無理だわ…」

蛍は新太に低い声で呟く。

「どうして男って、あんな女に引っ掛かるのかしら…」


(斗亜も律季も、マジで見る目ないわ…まぁ蛍には新太がいるから良いけど…―――)


そう思いながら、顔をあげて目の前にいる新太を見ると、

新太の視線は…美琴と斗亜の方を向いていた。


「新太…?」

「ん?」

名前を呼びかけると、新太の視線は蛍に向く。


「今、美琴ちゃん見てた?」

「見てないよ…」

新太が蛍に言いながら、優しく頭をぽんぽんと撫でる。

「蛍は心配症だな」

新太が微笑んで言う。



蛍は…、新太が否定すると分かっていて聞いた。

――――否定して欲しくてわざと聞いたのだと、頭を撫でられながら気付いた。



いつも、妙に勘が鋭くて…、男にうざがられるほど心配症な自分の悪い癖。


他に好きな人がいると感じて、一度新太に別れを告げたとき、

言われた言葉が脳裏をよぎる。


『ごめん、蛍…。俺、蛍のこと大事にするから…頼むから別れるなんて言わないでよ…』


あのとき感じた…新太の必死な気持ちは―――。


『俺、変わるから…ちゃんと…』


あのとき言った、“本当の意味”は―――。


(やっぱり蛍のためなんかじゃなくて…?)



頭の中で、出てきそうな答えを…あわてて蛍は停止する。

(考えたらダメだ…そしたらまた私は…きっと泣いてしまう)



能天気な美琴を睨みながら、蛍は新太に抱き付いた…。


(新太は、どこにも行かせない…。蛍のものなんだから)

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