避けてた理由
「美琴、来週律季と別荘行くの?」
その日の夜、美琴の部屋に行き、新太は美琴に確認した。
「あれ?律季に聞いたの?」
美琴はベッドに寝転がり、ファッション雑誌を見ていた。
「うん…てか誘われたから」
新太が言うと、
「え、新太も?」
美琴は驚いて、雑誌から目を新太の方へ向ける。
「―――美琴は、嫌なんだよね…」
立ったままうつ向いて言う新太が、なんだか可哀想になって、
美琴は苦笑すると答えた。
「嫌じゃないよ…」
ベッドから起き上がると、美琴は新太の前に立つ。
「ただね、新太がいると、ついいつもの自分が出ちゃうのが怖いんだ…」
「いつもの美琴じゃだめなの?」
美琴を見下ろして、新太が尋ねる。
「うん…だってバレるよ?」
「バレないよ、だって誰も知らないんだからーーー」
(俺達が姉弟ってことは誰も…ーーー)
「バレるよ、自分でも思うもん…バレバレだって」
美琴は、自分を嘲笑うように言う。
「?」
(バレバレ?なんの話だ?)
新太が頭の中で考えていると、美琴が笑顔で言う。
「新太のこと好きな自分」
「え…」
瞬きをするのも忘れて…必死で美琴の言葉を脳内変換する。
(それは、つまり…)
「私、全然“顔見知り”程度の態度に出来ないと思って…」
「てか、今俺のこと好きって…」
新太の声は震え、自分でもかなり動揺していると自覚していた。
「好きだよ、新太は好きじゃないの?」
その言葉を聞いて、美琴の“好き”の意味が分かった新太は、脳内で正しく変換し直す。
(“姉弟として”ってことか…)
ホッとしたのに、萎んでいく気持ちを、新太は感じながら言う。
「好きだよ…」




