ひとまず
第一志望の大学の前期試験も終わり、
新太はひとまずやり終えた疲労感とプレッシャーから解放され、ふらふらしながら会場から出た。
「新太!」
声をかけられて、新太は人混みの中から美琴の姿を探す。
「美琴」
美琴を見つけると、新太は笑顔を見せる。
「もしかして…俺のこと待っててくれたの?」
「お疲れさま!!」
新太の問いに答える代わりに、美琴が笑顔で新太に言う。
最高の労いの言葉だった。
美琴に言われて、新太は一緒に近くのカフェに入った。
「どう?出来た?」
美琴が明るく聞く。
「多分…」
新太が笑って答えると、とりあえず頼んでいたコーヒーを飲む。
「でも、とりあえず終わった…」
ホッとしたように、新太が笑いかける。
美琴は、胸が痛んだ。
(今日言おうってずっと決めてたし…ーーー)
「美琴は?」
美琴が決心して口を開こうとしたとき、新太が美琴に聞く。
「出来た?」
「あぁ、うん…まぁ…」
美琴は曖昧に答える。
新太にバレないようにするためだけに、美琴は今日の試験を受けていた。
「あのね、新太…ーーー」
美琴が、気まずそうに口を開く。
「私…新太にずっと言ってなかったことがあって…ーーー」
「何?」
言いにくそうに切り出した美琴を見て、
新太は良い話ではないと思い、自然と声が低くなる。
「実は私、アメリカの大学に進学するの…ーーー」




