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修羅場の予感
塾の帰り、新太は一人で街を歩いていた。
何気なく目を向けたファミレスに、見慣れた二人の姿があった。
「――――美琴…、律季?」
美琴が泣きそうになっているところを、正面に座っていた律季が席を立ち、美琴の隣に座りそっと抱き締める。
(なんだ…ーーーこれ?)
新太は、ショックで目の前が真っ暗になった。
(何かの間違いだ…ーーー二人がよりを戻すなんて…)
そう思っているはずなのに、ガラス越しに見える現実は、
どう見てもカップルだ。
新太は、嫉妬から一瞬逃げようかと背を向けたが、
逃げないと決めたのだと、気持ちを奮い立たせてファミレスへ足を踏み入れた。
「いらっしゃいませ…―――お、お客さま?」
ウエイトレスがズカズカと入っていく新太に驚いて立ち尽くす。
「―――――俺も、一緒していい?」
新太は、嫉妬で苛つく気持ちを必死に胸に押し込んで、
美琴と律季の座る席に立って言う。
新太の声に、律季の胸に顔を埋めていた美琴が顔を上げるのと、律季が美琴の肩に回していた手を離すのが同時だった。
「新太…」




