三人
「う、海?」
「そ、海。」
斗亜の青ざめた顔を、頬杖をつきながら愉しそうに律季が眺める。
「は?まだ夏休み始まったばっかなんですけどー」
妬む気持ちを隠すように、斗亜が言う。
「だって誘われたからさぁ、美琴に」
そんな斗亜の気持ちをお見通しの律季は愉しげに、微笑んで言う。
「俺が補習地獄に苦しんでるってのに…」
斗亜が項垂れると、
「いや、それは自業自得だよね?」
律季が冷ややかに突っ込む。
「って、なんで二人で行くんだよ!他にも誘えよ、新太とか」
「新太はデートだったし…仕方ないじゃん」
「うわー、リア充マジうぜぇー」
「それ、八つ当たり」
律季が斗亜にため息をつく。
「でもさ、美琴ってどうして誰とも付き合わないんだろうな…」
頬杖をつきながら、遠い目をして律季が言う。
「俺が好きだって言っても、流されちゃったしなー」
「は?」
(な、なんだと?)
さらっと言う律季に、斗亜が動揺する。
「言ったのか!?」
斗亜が身を乗り出して、律季に問い詰める。
「うん、つい…」
苦笑いで律季が答える。
「“つい”じゃねーし!美琴は俺のなんだから、お前は引っ込んでろ」
「はぁ?美琴は誰の所有物でもないし。なぁ、新太?」
「え、お、うん…?」
さっきから斗亜の声の音量を、いつ店員に注意されるかハラハラしていた新太は、突然話を振られて動揺する。
「てかさ、俺…いなくても良くない?」
(俺としては、美琴の話とか聞きたくないんだけど…)
二人に呼び出されていつものファミレスに来てみたものの、話はさっきから“美琴トーク”で盛り上がっている。
新太は、堪らず席を立とうとする。
「いやいや、待てよ新太。本題はさ、来週俺の別荘に行かないかってことなんだわ」
隣に座っていた律季が、早口で言う。
「え、来週?てか、別荘って…」
突然の話に、新太が戸惑っていると、
「律季ん家、金持ちだから」
斗亜が、ごく当然の事のように言いながら律季を顎でさす。
「毎年、斗亜とか友達何人かで行ってたんだよ。今年は新太と少人数で行きたいなと思ってさ」
斗亜の“金持ち発言”を否定することもなく、律季がニコニコしながら言う。
「へぇ…」
(何それ、凄すぎだろ…)
「海も目の前だし、快適だぞ!!なんなら蛍も誘えば?」
まだ、新太は行くとも言っていないのに、斗亜が楽しそうに声を弾ませ話を進めていく。
「そうそう、女の子一人じゃ美琴も警戒するだろうし」
律季が頷きながら言う。
(え、ちょっと待て…今、“美琴”が出てこなかったか?)
「じゃあ決まりなー!五人で別荘お泊まり会ー!」
ハイテンションの斗亜に、嬉しそうな律季。
「いや、俺は…」
新太の声は二人に届かず、新太はため息をついた。
『夏休み、やりたいことやるんだー』
美琴の笑顔を思い出して、新太は複雑な気持ちを胸に押し込める。




