冬休みに入る前に
街がイルミネーションで煌めく季節。
あっという間に、クリスマスシーズンが訪れた。
センター試験まであと1ヶ月に迫って、教室もピリピリした空気の中、冬休みに入る。
「新太、帰ろー」
つい癖で、美琴はいつものように声をかけた。
「あ、ごめん…今日はこれから塾なんだ」
新太がそう言うと急いで教室を出ていく。
新太は、模試の結果がずっとC判定なのを気にして…焦っていた。
美琴は自分はすでにアメリカの大学に行くことが決まったことを言えずに、心を痛めていた。
(新太は、私と同じ大学に行くために頑張ってるのに…ーーーその大学に行くことはないと、今更言えない…)
今言ってしまえば、美琴は楽になるが、
新太はきっとショックを受けて、受験どころではなくなる。
だから二次試験が終わるまでは、美琴は同じ大学を目指しているふりをすることにしていた。
(ごめん…新太…ーー――頑張って…)
「美琴、帰らないの?」
美琴が思い詰めた表情をしていたのを自分の席から見ていた律季は、さりげなく声をかける。
「帰るよー、今帰ろうとしてたとこ」
美琴が笑顔をつくって元気に言う。
「あのさ、」
律季が優しく微笑んで言う。
「これからちょっと、寄り道して帰らない?」




