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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第四章】
229/250

言いたいこと

「美琴、通訳になりたいって言ってたよな?」


真太の書斎に入るのは、ずいぶん久しぶりだった。


デスクチェアに座ったまま、真太が問いかける。



「うん、まぁ…」

立ったまま、美琴は気まずそうに、真太から目をそらす。


(“話”って、やっぱりそれか…―ーーーー)


それなら、次に来る言葉は予想できる。




「アメリカの大学に、行った方が将来的には良いんじゃないのか?」



「パパ…」

真太の言葉に、美琴はため息をつく。


「もしかして、ママに頼まれた?」



「美緒に頼まれたから言ってるんじゃないよ、パパは美琴のことを思って言っているだけで」


真太はそう前置きしてから、また話し出す。

「通訳になるなら、まず向こうの文化とか知るべきだろう?」


美琴は、目をそらしたまま言い返す。

「それなら去年一年間で学べたし…」



「一年間で学べた分だけで良いのか?――――本当は、もっと向こうで学びたいと思っているんじゃないのか?」


(パパの言いたいことは分かる、でも…ーーー)


「――――でも…」


(私は、新太と離れたくない…ーーーー)


言葉にすることができずに、美琴は下を向く。




「美琴、」


そんな美琴に、真太が優しく声をかける。


「好きな人がいるんだね?」




「え…」


気持ちを見透かされたのかと、美琴は、ドキッと心臓が跳ねた。



「その人と…離れたくない。そう思っている?」



「うん…」

美琴は、素直に頷く。



「だったら、そんな夢は諦めなさい」


真太がハッキリと強めの口調で言う。


「その程度の夢なら、叶えるべきじゃない」




「なんで…ーーー?」


美琴は、真太に否定されて、悲しさのあまり、声が出なかった。



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