美緒の気持ち (後編)
「真太は良いの?あの子達、付き合い始めても…ーーー」
美緒の表情は変わらず険しい。
「美緒は…?」
真太は、何となく分かっていたが念のため尋ねる。
「私は反対だわ。一時の感情で、大事な将来を棒にふるなんて有り得ない…ーーー」
美緒は即答した。
「一時の感情…―――?」
真太が怪訝な顔をして聞き返す。
「だって、そうでしょ?美琴には夢があるのに…ーーー」
美緒は、視線を外して話し出す。
「美緒も…俺と付き合ってた時、そう思ってたの?」
真太が、そんな美緒の目の前に立つ。
「え?」
「俺とは、一時の感情だって…思ってた?」
美緒の腕を掴んで、真太が切ない表情で美緒を見つめる。
「…――――思ってたよ。その通りだったじゃない」
「それ、本気で言ってるの?」
真太の手に、無意識に力が入る。
「痛い…放して」
美緒は、真太の手を振り払おうとする。
「私たちの話をしに来たんじゃないわ。ーーーー私は、美琴と新太くんの将来を思って…」
真太は、するっと、掴んでいた手を放した。
「美緒…ーーー」
真太は、会社へと向かおうと歩きながら、美緒の方を振り返る。
「――――とりあえず、美琴と一度話してみるよ」
美緒は、そんな真太を立ったまま見つめる。
「二人が付き合ってることは、舞子さんには…ーーー」
「言わないよ…。新太にも美琴にも、俺からは言わない」
「うん…」
「美緒は、美琴に…―――アメリカの大学に行って欲しいんだろ?」
「うん」
「分かった、じゃあ…―ー」
それだけ言うと、真太は振り返ることなく、行ってしまった。
「うん、ありがとう…」
真太の背中に美緒はお礼を言うと、真太に背を向けて歩き出した。




