告白
「―――辞めたい?」
撮影の仕事が終わって、美琴は美緒の事務所に顔を出していた。
突然の発言に、美緒は思わず声をあげた。
「うん…」
美琴は、すまなそうにうつ向いたまま頷く。
「どうしたの急に…。」
「急…じゃなくて。以前から言わなきゃと思ってた」
美琴はうつ向いたまま話し出す。
「私、楽しかったけど…これを仕事にするつもりはないんだ」
美琴は、顔をあげて、決心したように美緒の目を見て言う。
「私…大学出て、ーーーー通訳になりたいの」
「通訳…?」
美緒が言葉を繰り返す。
「一年間留学して、そう思ったの。アメリカの文化の違いとか…そういうのをたくさん学んで…。もっと日本もアメリカのこと知ったり、アメリカも日本のこと知ったりできたら…って」
美琴が熱心に話し、美緒は美琴がこれ以上モデルをする気がないことを察した。
美緒は元から娘の夢を応援するつもりだった。
「良いんじゃない?頑張って!」
美緒は、美琴に微笑みかける。
「でもそれなら…向こうの大学に行けば良かったんじゃないの?推薦の話、来ていたでしょう?」
通訳なら、もっとアメリカの大学で学ぶことも必要なのでは?と美琴に尋ねる。
「…――――」
美琴は、また言いにくそうに顔を伏せた。
「そう…だったけど…。でも私、離れたくないんだ…新太と。」
「新太くん?―――って、真太の息子の…?」
(一緒に暮らしてる…“弟”よね?)
驚いて聞き返す美緒に、美琴が顔をあげて答える。
「ママ…私ね…ーーー新太が好きなの…」




