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はかる気持ち  作者: 夢呂
【第四章】
218/250

大学目指す理由

――――ずっと美琴と一緒に居たかった。


それだけしか、考えてなかった。


だから美琴が“弟”としてじゃなく“男”として好きだと言ってもらえて嬉しかった。



嬉しくて、幸せで。


幸せ過ぎて、怖いぐらいだ。





『新太の夢は何?』


俺の夢は…――――。







「瀬戸くん?」


翌朝、予備校に着いて、席に座っていた新太に、

早子が気付いて、声をかけた。


「あ、深雪さん。おはよ」

新太は、それだけ言うと、また黙り込んだ。



「昨日、どうしたの?―――これ、一応まとめたからあげるわ」


早子は、ルーズリーフに昨日の授業内容をまとめたものを手渡す。



「あぁ…ありがとう。」

新太は、それを何気無く受け取り、じっと眺める。





「――――深雪さん、夢とかある?」

早子がくれたルーズリーフをじっと眺めたまま、

隣に座った早子に新太は尋ねた。


「は?」

早子は突然のことに驚く。


「夢?――――無いわね、別に。」

早子は無表情で答える。


「無いの?」


「無きゃダメ?―――私は別に大学出て、公務員か一般企業に就職して、お金を貰えたらそれでいいわ」

早子は淡々と答える。


「え…」



「大学は、就職するのに必要な“資格”ぐらいにしか考えていないし。今の企業は、どこも“大卒”前提でしょ?」


「まぁ…」


「瀬戸くんも、そういう理由で大学目指してるんじゃないの?なんか立派な夢とかあるの?」

新太は、聞き返される。


「無い。―――だから、深雪さんの言う通りだ」

少し、吹っ切れたように微笑んで、新太が言う。


「?」

話の意図が分からず、早子は無表情で首をかしげる。



「大学出て、就職して…お金貰えたらそれでいい」


(そのお金で…美琴と暮らせたら…ーーーー)






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