大学目指す理由
――――ずっと美琴と一緒に居たかった。
それだけしか、考えてなかった。
だから美琴が“弟”としてじゃなく“男”として好きだと言ってもらえて嬉しかった。
嬉しくて、幸せで。
幸せ過ぎて、怖いぐらいだ。
『新太の夢は何?』
俺の夢は…――――。
「瀬戸くん?」
翌朝、予備校に着いて、席に座っていた新太に、
早子が気付いて、声をかけた。
「あ、深雪さん。おはよ」
新太は、それだけ言うと、また黙り込んだ。
「昨日、どうしたの?―――これ、一応まとめたからあげるわ」
早子は、ルーズリーフに昨日の授業内容をまとめたものを手渡す。
「あぁ…ありがとう。」
新太は、それを何気無く受け取り、じっと眺める。
「――――深雪さん、夢とかある?」
早子がくれたルーズリーフをじっと眺めたまま、
隣に座った早子に新太は尋ねた。
「は?」
早子は突然のことに驚く。
「夢?――――無いわね、別に。」
早子は無表情で答える。
「無いの?」
「無きゃダメ?―――私は別に大学出て、公務員か一般企業に就職して、お金を貰えたらそれでいいわ」
早子は淡々と答える。
「え…」
「大学は、就職するのに必要な“資格”ぐらいにしか考えていないし。今の企業は、どこも“大卒”前提でしょ?」
「まぁ…」
「瀬戸くんも、そういう理由で大学目指してるんじゃないの?なんか立派な夢とかあるの?」
新太は、聞き返される。
「無い。―――だから、深雪さんの言う通りだ」
少し、吹っ切れたように微笑んで、新太が言う。
「?」
話の意図が分からず、早子は無表情で首をかしげる。
「大学出て、就職して…お金貰えたらそれでいい」
(そのお金で…美琴と暮らせたら…ーーーー)




